免疫 加齢 により低下していく

免疫 加齢

免疫 加齢 により低下していき、さらに弱体化します。加齢により免疫システムは弱体化するということです。このようにガン細胞を標的とするキラーT細胞やNK細胞が、私の体にも、あなたの体にも備わっています。なぜ私たちの体は、こんな仕組みを備えたのでしょうか?

免疫 加齢 により低下していく

発ガンのメカニズムについて紹介しました。ガン化の引き金は、細胞の分裂増殖をコントロールして私たちの体を生命として成り立たせている遺伝子のなかにありました。

そして、その引き金をひくのは、私たちが生きていくのに欠かせない酸素が不安定になった活性酸素でした。ガン細胞を排除する治安維持システムを私たちの体が備えているということは、私たち人類がガンになる可能性をいつも持っている動物であることを物語っているといえないでしょうか。

必ずガンになるといっては語弊がありますが、私たちの体内では一生の間に、一度ならずガン細胞が生まれてはリンパ球の働きで排除されているにちがいないということです。

私たちの体を構成する60兆個の細胞のうち、一生の間にガン化する可能性のある細胞が100億個ほどあるだろう、と見積もっている研究者もいます。その100億個すべてがガン化するわけではないにしても、私やあなたの体内にすでに1個や2個はガン細胞ができていても不思議はないのです。

ガン細胞が1個や2個であれば、マクロファージやNK細胞の出動だけでガン細胞を破壊し、その芽を摘むことができると考えられます。もしマクロファージやNK細胞の監視をかいくぐってガン細胞が活発に増殖し始めれば、ヘルパーT細胞やキラーT細胞がガン細胞を包囲し、特異的免疫による攻撃が開始されます。

私やあなたが今日までガンにならずにすんできたということは、体内にガン細胞がまったくできなかったというよりも、体内にできたガン細胞がこうした免疫監視機構すなわち治安維持システムのおかげで速やかに排除されてきた結果と考えるほうが自然です。

ところが、その頼みの綱の治安維持システムは、体の老化に伴い、急速に弱体化することが知られているのです。NK細胞の活性(細胞障害怪)の加齢変化です。

細胞障害性とは、ガン細胞を攻撃して破壊する能力と思っていただけばいいのですが、NK細胞の細胞障害性は20歳前後をピークとして、あとは坂を転がり落ちるように低下しているのがわかります。

では、ヘルパーT細胞やキラーT細胞による特異的免疫はどうかといいますと、やはり加齢に伴い、胸腺が萎縮して機能が衰えることが知られています。

胸腺は未成熟のT細胞にスバルタ教育を施し、高度に特異的な免疫機能の担い手として送り出す教育機関ですから、胸腺の機能が低下すれば、送り出されるヘルパーT細胞やキラーT細胞たちも、ガン抗原を十分に認識できなくなったり、その数自体も減るなど、働きが十分ではなくなるのです。

ガンの原因は、発ガン物質などの外因よりも、むしろこのような体内の治安維持システムの弱体化にあるという見方もできるのです。

正常細胞の発ガンの場面についていえば、体内に発生するフリーラジカルを速やかに消去して、ガン化の可能性がある100億個の正常細胞のうち実際にガン化する細胞を1個でも少なくすることが、ガンの予防になります。

しかし同時に、100億個のうち数個がすでにガン化し、活発に増殖を始めた場面をも想定しておかねばなりません。この場面では、治安維持システムを賦括化し、その弱体化をくい止めることがガンの予防につながると考えられるのです。

低下した免疫力を高めるためには

健康的な食事

バランスの取れた食事:

  • ビタミンC: 柑橘類(オレンジ、レモン)、キウイ、ピーマン、ブロッコリーなど。
  • ビタミンD: 魚(サーモン、マグロ)、キノコ、強化乳製品。
  • 亜鉛: 肉類(牛肉、豚肉)、ナッツ、種子、全粒穀物。
  • プロバイオティクス: ヨーグルト、キムチ、納豆、味噌などの発酵食品。

2. 定期的な運動

適度な運動:

  • 有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリング)を週に150分程度。
  • 筋力トレーニング(軽いウェイト、プッシュアップ)を週に2回以上。

3. 十分な睡眠

良質な睡眠:

  • 一晩に7〜9時間の睡眠を確保する。
  • 就寝前の1時間はスクリーンタイムを控える。
  • 寝室を快適な温度に保つ。

4. ストレス管理

ストレスを軽減する:

  • 瞑想、深呼吸、ヨガなどのリラクゼーションテクニックを取り入れる。
  • 趣味や友人との交流を楽しむ時間を確保する。
  • 適切なカウンセリングやサポートを受ける。

5. 適切な水分補給

水分補給:

  • 一日に約2リットルの水を飲むことを目標とする(個人差あり)。
  • カフェインやアルコールの過剰摂取を避ける。

6. 健康的な体重の維持

適正体重の維持:

  • 適度な食事と運動で健康的な体重を保つ。

7. 良好な衛生習慣

感染予防:

  • 手洗いをこまめに行う。
  • 人混みを避ける、マスクを着用するなどの予防策を取る。

8. 禁煙と節酒

有害習慣の改善:

  • タバコをやめる。
  • アルコール摂取を控えめにする(適度な飲酒)。

9. 日光浴

ビタミンD生成:

  • 日中の適度な日光浴(ただし、紫外線対策を忘れずに)。

10. 予防接種

ワクチン接種:

  • 定期的なインフルエンザワクチンなど、必要な予防接種を受ける。

まとめ

これらの方法を組み合わせることで、免疫力を高め、健康を維持することができます。自己ケアを継続的に行うことが重要です。

きのこ

T細胞 胸腺 で鍛えられて分化する

T細胞 胸腺

T細胞 胸腺 で鍛えられて分化します。T細胞は骨髄で生まれたあと 胸腺 へ送られて成熟T細胞となります。胸腺は、血管の道路網の中心である心臓のそばにある小さな器官ですが、T細胞はここで特異的免疫の担い手としてのスバルタ教育を受け、それぞれちがった役割を分担する数種類の精鋭部隊に分化するのです。

T細胞 胸腺 で鍛えられる

たとえばヘルパーT細胞と呼ばれる部隊は、マクロファージが食作用によって認識したガン細胞のかけら(抗原)をマクロファージから受けとり、これをB細胞やキラーT細胞に示します。

特異的免疫が非特異的免疫と異なるのは、標的をしっかり見定めて攻撃を仕掛ける点にありましたが、その特異的免疫に欠かせない抗原認識をマクロファージが行い、ヘルパーT細胞が仲介しているのです。

ヘルパーT細胞は同時に、インターロイキン2と呼ばれる物質を血中に放出します。このインターロイキン2は、B細胞に働いて抗体の産生を助けたり、次に述べるキラーT細胞に攻撃命令を出したり、NK細胞を活性化したりと、治安維持システム全体を賦活する作用をするのです。

ヘルパーT細胞がこのように特異的免疫のすぐれた「助っ人」として働くのに対して、キラーT細胞は名前の通り「殺し屋」の部隊です。それも、ガン細胞や肝炎ウィルスのもぐりこんだ細胞など、私たちの体にとって有害化した異常細胞を排除する専門の殺し屋として働いているのです。

ガン細胞とひとくくりにしていいますが、その顔の特徴(抗原)はガンのできた臓器などによって異なり、いろいろです。
キラーT細胞は、マクロファージからヘルパーT細胞を介して情報を得た特定のガン細胞の顔をおぼえて、いっせいにとり囲み、破壊します。

しかし、このガン細胞の顔を認識するということが、実際にはそう簡単ではないのです。ガン抗原の多くはガン細胞の表面などにあらわれるタンパク質ですが、正常細胞の表面にもよく似たタンパク質が存在します。

ガン細胞はもともと正常細胞から生まれたものですから、抗原となるタンパク質との差異はごくわずかにすぎません。
免疫の専門家はしばしば、自己と非自己という言葉を使いますが、秩序ある社会を構成している60兆の人(自己) から、ひそかに数をふやしつつある撹乱者(非自己)をいかにすばやく正確に見分けるかに、特異的免疫の成否がかかっているのです。

もし自己と非自己の識別がうまくいかないと、キラーT細胞がガン細胞などの異常細胞(非自己) のみならず正常細胞(自己)まで攻撃し始め、膠原病などの自己免疫疾患の原因となることもありえます。

このため、克進したキラーT細胞の働きを抑制するサブレッサーT細胞なる抑え役も、T細胞の一部隊として配備されています。

体内の治安維持システムで、もう一つふれておかねばならないのがNK細胞です。このNK細胞は主に特異的免疫を担うリンパ球のなかでは変わり種で、特異的免疫とマクロファージによる非特異的免疫との中間的な位置にいます。

NK細胞の働きは、特定のガン細胞の抗原を認識して攻撃を仕掛けるキラーT細胞とは異なり、ガン細胞であれば何でも手当たりしだいに破壊する、いわばガン細胞の天敵と考えられています。このため、英語のナチュラル・キラー(直訳すれば「生まれながらの殺し屋」)の頭文字をとってNKというあだ名で呼ばれているのです。

T細胞が胸腺で「鍛えられ文化する」プロセス

T細胞の元となる細胞(T系前駆細胞)は、骨髄でつくられた後、血液に乗って胸腺へとやってきます。胸腺に入ったT系前駆細胞は、そこで厳しい「教育」を受け、初めて一人前のT細胞として働くことができるようになるのです。このプロセスは、主に以下の段階で進みます。

  1. 分化と増殖:
    胸腺に到達した未熟なT細胞(胸腺細胞、thymocyte)は、胸腺内の微小環境(胸腺上皮細胞や線維芽細胞などからなる「ストロマ細胞」が形成する場)で、様々なシグナルを受けながら増殖し、分化の初期段階へと進みます。この段階で、T細胞の表面にあるT細胞受容体(TCR)の遺伝子が再編成され、それぞれ異なる抗原(病原体などの目印)を認識できるよう、多様なTCRが作られます。

  2. 正の選択(Positive Selection):
    TCRが作られたT細胞は、次に胸腺上皮細胞によって提示される自己のMHC分子(主要組織適合性複合体)を適切に認識できるかどうかを試されます。

    • 適切に自己MHCを認識できるT細胞のみが生き残ることを許されます。このMHCとは、細胞が「自分」であることを示す目印のようなもので、このMHCに病原体の断片が提示されることで、T細胞は異物を認識します。

    • 全くMHCを認識できないT細胞や、MHCへの結合が弱すぎるT細胞は、この段階で排除(アポトーシス:プログラムされた細胞死)されます。これにより、機能しないT細胞が無駄に増えることを防ぎます。

  3. 負の選択(Negative Selection):
    正の選択を生き残ったT細胞は、次に「自己を攻撃しない」という最も重要な教育を受けます。

    • 胸腺上皮細胞などが提示する様々な自己抗原に対して、強く反応してしまうT細胞は、自己免疫疾患(自分の体を誤って攻撃してしまう病気)の原因となるため、この段階で排除されます。

    • このプロセスによって、末梢のリンパ組織に放出されるT細胞は、異物のみを攻撃し、自己の組織は攻撃しないという「自己寛容性」を獲得します。

  4. サブタイプへの分化:
    厳しい選択を通過したT細胞は、その後、機能的なサブタイプへと分化します。主なT細胞のサブタイプには以下のものがあります。

    • ヘルパーT細胞(CD4陽性T細胞): 免疫反応の司令塔として、他の免疫細胞を活性化させる役割を担います。

    • キラーT細胞(細胞傷害性T細胞、CD8陽性T細胞): ウイルスに感染した細胞やがん細胞などを直接攻撃し、排除します。

胸腺の役割と加齢による変化

胸腺は、T細胞の「学校」として、私たちが生まれてから思春期頃まで最も活発に機能します。思春期を過ぎると胸腺は徐々に退縮し始め(胸腺の退縮)、T細胞の産生能力も低下していきます。これが、加齢とともに免疫力が低下する一因と考えられています。

このように、T細胞は胸腺という特別な環境で厳しい「教育」を受けることで、私たちの体を守るための高度な識別能力と攻撃能力を身につけているのです。

腸の敵

きのこ

免疫システム ガン細胞 を排除する体内から速やかに排除する

免疫システム ガン細胞

免疫システム ガン細胞 を排除する体内から速やかに排除する仕組みがあります。紹介します。免疫細胞リンパ球は、白血球の約30%を占めているいば特殊部隊です。この大隊は、B細胞、T細胞、NK細胞の3中隊から成っています。

免疫システム ガン細胞

私たちの体内では、毎日数千個もの細胞が正常な機能を失い、がん細胞へと変異していると考えられています。しかし、多くの人ががんを発症しないのは、体に備わった精巧な免疫システムが、これらの異常な細胞を速やかに見つけ出し、排除しているからです。このがん細胞を体内から排除する仕組みは、主に以下の要素によって支えられています。

B細胞は、抗体という弾丸を放つ、射撃の名手です。たとえばインフルエンザ・ウィルスという外敵が侵入すると、敵の特徴(抗原)をよく見定め、この特徴にぴつたりはまる弾丸(抗体)を大量に産生して、リンパ管内に放出します。

ガン細胞 排除
ガン細胞 排除

ガン細胞 排除

この弾丸が当たったウィルスは悪さを働けなくなり、「オプソニン効果」といってマクロファージがそのまわりをとり囲みます。

オプソニンの語源は「おいしくする」という意味のギリシャ語で、抗体の刺さった外敵は、マクロファージが旺盛な食作用を発揮する格好のえじきとなるのです。

インフルエンザに感染すると、リンパ節にこのB細胞をはじめ、ふだん以上に多くのリンパ球が結集するため、腫れてぐりぐりしたものができますが、あのぐりぐりによって、ウィルスが全身に広がるのをくい止めているわけです。

こうしてウイルスが退治されたあとも、血管やリンパ管の道路網には、その年に流行したインフルエンザ・ウィルスを標的とする抗体がまだ残って流れています。カゼを一度ひくと、そ年はもうひかないことが多いのはこのためです。

もしまたカゼをひいたとすれば、それは別の型の抗原を持つインフルエンザ・ウィルスに感染した証拠で、その場合にはB細胞によって再びその型に合う抗体が産生されます。

私たちの体に備わる免疫システムは、このようにたえず侵入して来る外敵を迎え撃つ安全保障システムではないかと、従来は考えられてきました。たしかに安全保障は不可欠ですが、リンパ球のT細胞やNK細胞の働きが明らかになるにつれ、免疫システムは別の役割も持っていることが知られるようになったのです。

一国の社会秩序がつつがなく維持されるには、外敵に対する安全保障システムだけでは十分ではありません。もしその国の内部に秩序を撹乱する者があらわれ、最初はたった1人であったのが仲間をつくり、その仲間が仲間を呼ぶ形で一味の数が際限もなく倍加しっづけたら、どうなるでしょうか?

社会秩序は混乱をきわめ、一味がなおも勢力を拡大しっづければ、やがてその国は滅びてしまうかもしれません。そんなことにならないためには、治安維持システムが必要です。ガン細胞はまさに、正常細胞のなかから生まれた秩序の撹乱者です。リンパ球のT細胞やNK細胞は、この撹乱著すなわちガン細胞を、体内から速やかに排除する治安維持システムという重要な役割を担っていることがわかってきたのです。

1. 免疫監視機構 (Immune Surveillance)

免疫監視機構とは、免疫システムが常に体内をパトロールし、がん細胞などの異常な細胞を早期に発見・排除する能力を指します。これは、がんの発生と進行を抑えるための重要な第一線です。

  • がん抗原の認識: がん細胞は、正常な細胞には存在しない、あるいは量が異常に増えている特定のタンパク質(がん抗原または腫瘍関連抗原)を細胞表面に発現させることがあります。免疫システムは、このがん抗原を異物として認識します。
  • 免疫細胞の活性化: がん抗原が免疫細胞によって認識されると、がん細胞を排除するための免疫反応が開始されます。

2. がん細胞を排除する主要な免疫細胞たち

免疫システムには、がん細胞を直接的または間接的に攻撃・排除する様々な種類の細胞が存在します。

  • NK細胞 (Natural Killer cells:ナチュラルキラー細胞):
    • 特徴: 生まれつき(ナチュラル)異物を殺す(キラー)能力を持つリンパ球の一種で、初期のがん細胞を発見・排除する上で特に重要です。
    • 仕組み: がん細胞やウイルス感染細胞は、しばしばMHCクラスI分子という「自己」を示す目印の発現が低下します。NK細胞は、このMHCクラスI分子の異常を感知し、抗体なしで直接がん細胞を認識・攻撃(細胞傷害活性)します。
  • 細胞傷害性T細胞 (CTL: Cytotoxic T Lymphocytes / キラーT細胞):
    • 特徴: 非常に特異性が高く、特定の「がん抗原」を提示しているがん細胞のみを狙い撃ちで破壊します。
    • 仕組み: がん細胞の表面に提示されたがん抗原(MHCクラスI分子と結合)を、T細胞受容体(TCR)で認識します。その後、パーフォリンやグランザイムといった特殊なタンパク質を放出し、がん細胞に穴を開けたり、細胞死(アポトーシス)を誘導したりして排除します。NK細胞とは異なり、がん抗原を「学習」して記憶するため、一度認識したがん細胞には効率的に反応します。
  • ヘルパーT細胞 (Helper T Lymphocytes):
    • 特徴: 直接がん細胞を攻撃しませんが、免疫反応の司令塔として他の免疫細胞(特にCTLやB細胞、マクロファージなど)を活性化させる重要な役割を担います。
    • 仕組み: がん抗原を認識すると、サイトカインという情報伝達物質を放出し、CTLの増殖や活性化を促したり、B細胞による抗体産生を助けたりします。
  • マクロファージ:
    • 特徴: 体内に侵入した異物や死んだ細胞、がん細胞などを「貪食(どんしょく)」する能力を持つ食細胞です。
    • 仕組み: がん細胞を直接食べたり、がん細胞の増殖を抑制する物質を放出したり、がん抗原をCTLに提示してその活性化を促す役割も担います。ただし、がんの種類や微小環境によっては、がんの増殖を助けてしまうタイプに変化することもあります(腫瘍関連マクロファージ)。
  • 樹状細胞 (Dendritic Cells):
    • 特徴: 最も強力な抗原提示細胞であり、「免疫システムの司令塔」とも呼ばれます。
    • 仕組み: がん細胞の破片やがん抗原を取り込み、それを消化・処理して自身の表面にMHCクラスI/II分子と結合させて提示します。そして、リンパ節へと移動し、未熟なCTLやヘルパーT細胞にがん抗原を「教育」することで、がん特異的な免疫反応を強力に誘導します。
  • B細胞:
    • 特徴: 抗体を作り出すリンパ球です。
    • 仕組み: がん細胞表面の特定の分子を認識し、それに対する抗体を産生します。抗体はがん細胞に結合し、NK細胞によるADCC活性(抗体依存性細胞傷害活性)を誘導したり、補体というタンパク質システムを活性化してがん細胞を破壊したりする働きをします。

3. がん細胞排除の主なステップ

がん細胞が体内に出現してから排除されるまでのプロセスは、以下のステップで進みます。

  1. がん細胞の発生: 正常細胞が遺伝子変異を起こし、がん細胞に変化します。
  2. がん抗原の提示: がん細胞は、異常なタンパク質(がん抗原)を細胞表面に提示します。
  3. 免疫細胞による認識: NK細胞が直接異常を感知したり、樹状細胞ががん抗原を取り込んで提示したりすることで、免疫細胞ががん細胞の存在を認識します。
  4. 免疫反応の活性化: 樹状細胞がリンパ節でT細胞を活性化し、がん特異的なCTLやヘルパーT細胞が増殖・分化します。
  5. がん細胞への攻撃: 活性化されたCTL、NK細胞、マクロファージ、抗体などが、がん細胞を見つけ出して破壊します。
  6. 免疫記憶: 一度がん抗原を認識した免疫細胞は記憶細胞となり、将来同じがん細胞が出現した場合に、より迅速かつ強力に反応できる準備を整えます。

4. 免疫システムの限界とがん免疫療法の発展

多くの場合、この免疫監視機構が機能することで、がんは未然に防がれています。しかし、がん細胞も進化し、免疫システムからの攻撃を巧みに回避するメカニズムを獲得することがあります。例えば、免疫チェックポイント分子を発現させて免疫細胞の働きを抑制したり、がん抗原の発現を低下させて見つかりにくくしたりします。

このような免疫逃避のメカニズムが明らかになったことで、近年では、免疫システムの力を最大限に引き出してがんを治療する「がん免疫療法」が目覚ましい進歩を遂げています。免疫チェックポイント阻害剤などがその代表例であり、がん細胞がかけたブレーキを解除することで、本来の免疫力を回復させ、がんを攻撃させることを目指します。

このように、私たちの体内にはがん細胞の発生を常に監視し、速やかに排除するための非常に精緻な仕組みが備わっているのです。

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