エノキダケとブナシメジの毎食摂取が基本

ガンの予防には
発ガン抑制とガンの増殖抑制の2つの過程を考えるべきで、そのいずれにも身近な食用きのこが効果を発揮することを紹介してきました。

読者がお知りになりたいのは結局のところ、何をどのくらい食べればガンが防げるのかという一点に尽きるかもしれません。

エノキタケについては疫学調査の結果から、週3日以上、4人家族で週10袋が摂取量の目安とされました。

ブナシメジについては今述べたように、4人家族で1日1パックが目安となりますが、できればもう少し多めに摂取したほうが効果は高いでしょう。

年間にすれば365パック以上になりますが、現在の平均的な4人家族の摂取量は年間20パック程度にすぎないのが現状です。ずいぶんたくさん食べなければならないのだな、と思われたでしょうか。

しかし、きのこの抗ガン作用の研究を長年続けてきた手ごたえから、数ある食用きのこのなかでもエノキタケとブナシメジのガン予防効果が一歩抜け出ているように私には思えます。私自身、ここ何年かはこの目安量にしたがって家族とともにエノキタケとブナシメジを食べているのです。

では、他の食用きのこをどうするかということになりますが、私はエノキタケとブナシメジの常食を毎日の献立のベースとしながら、他のきのこも食べる機会があれば旺盛に食卓にとり入れるということでいいのではないかと思います。

私たちの研究で現在までに明らかになったガンを防ぐきのこの王様はエノキタケとブナシメジですが、人工栽培が最近可能になった新顔の食用きのこも続々と登場しています。

こうした新顔のなかにもすぐれた抗ガン作用を発揮するものがあると報告されています。その反面、なかには声高く喧伝されているものもありますが、国立がんセンターで市販のすべてのきのこを試験してみた結果では、それほどでもないものもありました。

食用きのこのはあらゆる分類が特徴ですが、。みなさんもよくご存じのきのこが多いなかで、シメジ属の「ハタケシメジ」はまだ見たことも聞いたこともないかたが多いかもしれません。

これまで「シメジ」と呼ばれてきたきのこにはヒラタケとブナシメジがありました。

ヒラタケは傘が灰色がかり、少し凹んでいるのに対して、ブナシメジは傘にまるみがあり、傘の茶色と柄の白のコントラストが美しいきのこです。

全国生産量ではすでにブナシメジがヒラタケの4倍以上に伸びていますので、ブナシメジのほうでも「シメジ」と表記してもよかったのですが、そうしなかった理由はブナシメジがシロタモギタケ属のきのこで、植物学上の分類ではこれとはまた別にシメジ属というのがあるからです。「香りマツタケ、昧シメジ」といって昔から珍重されているシメジとは、シメジ属のホンシメジのことです。人工栽培の試みが長く続けられましたが、マツタケと同じく菌根菌(他の植物の根などと特殊な栄養のやりとりをして共生するきのこ) であるため、今日までホンシメジの栽培に成功した例はほとんどありません。

ハタケシメジは、そのホンシメジの近縁種で、人工栽培が数年前に可能になったきのこです。うま味や歯ざわりは野生のホンシメジにもまさるといわれ、現在は一部の料亭などで用いられているだけですが、数年後には私たちの食卓にものぼるポピュラーなきのこになるものと予想されます。

私たちはさっそく、このハタケシメジの抗ガン作用を調べる実験を行いました。実験方法は、ブナシメジによるガンの増殖抑制効果を調べたときと同じく、ハタケシメジを粉末にしたものをマウスに食べさせる方法をとりました。

4人家族1日1パックがブナシメジの摂取目安

誰でも手軽に買えるブナシメジのあのパックが、発ガン抑制およびガン増殖抑制という二重の効果を秘めた「食べるガン予防薬」であることが、2つの実験からおわかりいただけたかと思います。

問題は1日の摂取量の目安です。薬というものは決められた服用量より多く飲んだからといって効き目が強くなるわけではなく、むしろ副作用が心配されるのと同様で、ブナシメジのような食品も多く食べれば食べるほどガン予防効果が高まるというものではありません。

エノキタケの場合のように疫学調査が行われたわけではないのではっきりとはいえないものの、実験でマウスに与えたブナシメジ粉末の量と抑制効果の強さから試算すると、4人家族で1日1パック食べるだけでもガン予防につながる可能性があるだろうと推測しています。

2つの実験ではマウスにブナシメジを毎日食べさせましたが、私たちもガン予防効果を期待するのであれば、1日に食べる量はわずかでも、毎日食べることが大切でしょう。

私たちの体内では毎日、フリーラジカルが発生して発ガンの機会をうかがっており、喫煙などの習慣で発ガン物質を摂取すれば、フリーラジカル発生量はさらにふえます。

そのフリーラジカルを速やかに消去するには、血祭のフリーラジカル消去活性を常に高いレベルに保つ必要があります。そのためには、ブナシメジのようなフリーラジカル消去食品を毎日とることが近道です。

また、加齢とともに弱体化する治安維持システム(免疫システム)を賦活して、体内にできたガンの芽を速やかに摘みとるためにも、ブナシメジやエノキタケなどのきのこを毎日食べることがすすめられるのです。

かつては市販の「シメジ」の主流だったヒラタケが熟を加えるとやや歯ざわりが落ちるのにくらべ、ブナシメジ(「やまびこほんしめじ」) は品種改良の成果でプリプリとした食感があり、熟をかけても歯ざわりが落ちません。

このため、数回噛むと、すぐに飲みこんでしまいがちですが、先ほどの実験で明らかになったように、ブナシメジと唾液が口の中で十分にまざり、α ナミラーゼの作用でどろどろになるまで噛んでから飲みこむように努めれば、同じ1パックのブナシメジがより高いガン予防効果を発揮してくれます。

唾液の消化酵素がガンの増殖抑制効果をアップさせる

ブナシメジの粉末を用いて、ガンの増殖抑制試験を行いました。36匹のマウスを今度は12匹ずつの3群に分け、すべてのマウスの皮下にサルコマ180を移植した翌日から異なるエサを与えます。

第1群には普通のエサを、第2群にはブナシメジの粉末を0.38 g含むエサを、そして第3群には、第2群と同じ量のブナシメジをα・アミラーゼで処理したものを含むエサを与えました。

α・アミラーゼは唾液などに含まれる消化酵素で、この酵素で処理したブナシメジの粉末は口のなかでよく噛んだあとのようにどろどろになります。

第3群にブナシメジをα・アミラーゼ処理して与えてみたのは、あらかじめこのように消化したほうが、エノキタケのEA6に相当するような活性成分がよく引き出されて作用を発揮するかもしれないと考えたからです。

こうしてサルコマ180の移植後18日間、異なるエサを与えて5週後にガンを摘出した結果を集計しました。

増殖して大きくなったガンの重さの平均を各群で測定し比較したところ、対照群では平均6.7 g ありましたが、ブナシメジ群では3.5 g に抑制されました。ブナシメジ+ α・アミラーゼ群ではさらによく、ガンの増殖が2.7 gにまで抑えられたのです。

増殖阻止率は、ブナシメジ群で48 %、ブナシメジ+ α・アミラーゼ群では60 % にのぼりました。この実験から、私たちはブナシメジを常食することで、先ほどの発ガン抑制効果に加え、ガンの増殖抑制効果をも期待できると考えてよさそうです。ブナシメジがどのようにしてガンの増殖を抑制するかといえば、私たちの体に備わる免疫システムを賦活することによるものと考えられるのです。

ブナシメジを食べたマウスの発がん率はわずか7分の1程度

まず、発ガン抑制試験です。

72 匹のマウスを36匹ずつの2群に分け、一方には普通のエサを、他方には普通のエサにブナシメジの粉末を5%まぜたエサを与えて飼育します。

1週間後に強力な発ガン物質を72匹すべてのマウスに皮下注射し、その後もそれぞれのマウスに普通のエサ(対照群)とブナシメジを5%まぜたエサ(ブナシメジ群) を毎日与えつづけます。こうして1年半(76週) にわたる観察を続けながら、マウスの皮下に発生したガンが平均直径約5mmに達し、手でさわってわかるようになったとき、「発ガン」したと判定したのです。

これはヒトでいえば「臨床ガン」になった状態を意味します。ブナシメジを食べたマウスの発ガン率が低く抑えられているのが一目でわかる臨床試験でした。

対照群では、16週後に最初の1匹にガンができたのを皮切りに、相次いで発ガンが起こり、76週で36匹中21 匹に発ガンが確認されました。

ところが、ブナシメジ群では76 週を通じてガンができたのはわずか3匹でした。発ガン率が対照群の7分の1に抑えられたのです。

特に観察期間のなかばを過ぎた4週以降は、対照群とブナシメジ群の間に統計学的な有意差が認められました。有意差とは誤差でない明らかな差のことだと前に説明しましたが、より正確にいえば、両群の間にみられる差が誤差である危険率が5%以下あるいは1%以下であることを意味します。

実験では、最後の10週になると、対照群とブナシメジ群の間に開いた発ガン率の差が誤差である危険率は、0.1%以下に減少しました。このことは、同じ実験を1000回繰り返したとしても999回は対照群に比してブナシメジ群の発ガン率が明らかに低いという同じ結果が得られるにちがいない、という意味です。

きのこから得た抽出物でなく、きのこ自体を動物に食べさせてしんぼう強く観察を続け、その発ガン抑制効果を証明した研究は、世界でもこれが初めてでした。

それほど、たいへん労力の要る研究でした。マウスの体と私たちヒトの体はむろん仕組みが異なりますが、この実験から、ブナシメジを常食すれば発ガン抑制効果を期待できることはほぼ確実と思われます。そして、ブナシメジがどのようにして発ガンを抑制するかといえば、主として血漿のフリーラジカル消去活性を高める作用に加え、免疫賦括作用にもよるものと推測されるのです。
血液のフリーラジカル消去活性を高めるブナシメジ