潜在ガンの間に免疫システムを賦活してガン細胞を攻撃

きのこなどのフリーラジカル消去作用をもってしても追いつかないほど、多量のフリーラジカルが(喫煙などの悪しき習慣によって)体内で発生すれば、正常細胞のガン化が起こります。

ガン細胞が体内にできたあとでは、フリーラジカル消去とは別の予防法を講じなくてはなりません。すなわち私たちの体にもともと備わっている免疫システムを賦活して、ガン細胞の増殖を抑えこむことが必要です。

免疫システムの主戟力となるのは白血球の仲間であるリンパ球ですが、ガン細胞は強敵で、リンパ球が100個ぐらい束になってやっとガン細胞を1個だけ破壊できるといわれます。

私たちの体内には常時、重さにして1也以上、数にして1兆個以上ものリンパ球が流れていますが、仮にそのリンパ球がいっせいにガン細胞を攻撃したとしても10億個のガン細胞を破壊するのがやっとなのです。

ガンが直径1 cm以上になり、10億個のガン細胞がさらに20億個、40億個、80億個と活発にふえつづけている場合には、免疫システムをいくら賦活するといっても、ガンを完全に退縮(消失)させることは非常にむずかしく、その増殖を阻止するのでさえ困難といわねばなりません。

生き残ったガン細胞は再び、しぶとく増殖を開始します。それをまたリンパ球が叩きます。ガン組織が完全に退縮するまでこの闘いが繰り返されるわけですが、闘いが長びいてリンパ球ひへいが疲弊してくると、免疫システムが著しく衰え、その隙に乗じてガンが一気に増殖し始めます。

実際、進行ガンの患者さんはこのような経過をたどることが多いのです。これに対して、ガンがまだ直径1 mm以下でしかない場合には、リンパ球たちも非常に闘いやすくなります。通常、直径1 cm以上のガンを「臨床ガン」と呼ぶのに対して、こうした診断や126治療の対象とならないガンを「潜在ガン」と呼んで区別することもありますが、1個のガン細胞が直径1 mmの潜在ガンになるまでには先ほどの推定計算によると、1年8ヶ月~5年もの猶予があります。

この間に免疫システムを十分に賦活することができれば、潜在ガンが臨床ガンに進展しないように増殖を阻止し、うまくいけば潜在ガンを完全退縮させることも可能と考えられるのです。もっとも、相手は潜在ガンですから、はたして私や皆さんのの体内に今現在そうした潜在ガンができているかどうか、できているとすれば1年8ヶ月~5年の猶予期間のどの段階にあるのかなど、検査で調べてもわかるものではありません。

したがって、大切なのは、時折思い出したようにではなく、毎日の習慣のなかで免疫システムを繰り返し賦活しつづけることです。ありがたいことに、きのこにはフリーラジカル消去作用のみならず、毎日食べるだけで免疫システムを賦活する効果も期待できるのです。

1個のガン細胞が臨床ガンになるには2.5年~7.5年もかかる

ガン細胞が正常細胞と大きく異なるのは「自律性増殖」という性質を獲得している点にあります。。正常細胞がまわりの細胞との協調関係を保ちながら必要なだけ増殖して、秩序ある組織を形づくるのに対して、ガン細胞は自分勝手に、それも際限なく増殖しつづけます。

l個のガン細胞が1回分裂すれば2個にふえるだけですが、2回目にその2個が2個とも分裂すれば4個に、3回目にその4個が4個とも分裂すれば8個に、4回目には16個に、5回目には32個に…と分裂のたびに数が倍加していくのです。

ガン細胞が1回の細胞分裂に要する時間は数日~数十日といわれますが、実際には数日ごとに倍加するわけではありません。

個々のガン細胞をガン組織につなぎとめる結合組織や毛細血管の発達が、細胞分裂のスピードよりゆるやかなため、1つのガン組織全体でみると、2倍の大きさに増殖するのに平均1~3ヶ月かかる、というのが専門家の見積もりです。

こうして最初の1個の細胞の発ガンから、直径1mmのまだ肉眼では見えない初期のガンができるまでには、およそ1年8ヶ月~5年を要します。これが、ガンの増殖の平均的なスピードと考えられています。

この1mのガンがさらに増殖して、肉眼でもとらえることができ、診断や治療の対象となる直径1cmのガンに成長するまでには、発ガンから2年半~7年半もの時間が流れているのです。

自律性増殖を続けるガン細胞の恐ろしさは、ここからです。直径1cmのガンは、数にしておよそ10億個くらいのガン細胞からなっています。1偶のガン細胞が5回分裂しても32個にふえるだけですが、10億個のガン細胞がいっせいに5回分裂を繰り返せば、320億個にふえてしまいます。

このようにふえると、ガン組織が周囲の正常組織にじわじわと入りこむ「浸潤」もみられるようになります。こうして直径1cmの早期ガンが、直径10cm、重さにして1kgもある巨大なガン組織に進展するまでには、早ければ10ヶ月、長くても2年しかかからない計算になるのです。

きのこに火を通しすぎないのがフリーラジカルを消去するコツ

血液のフリーラジカル消去活性を高めることを期待してきのこを常食するのであれば、先の実験で、エノキタケやマッシュルームの抽出液が100度5分間の加熱で著しくその効果を減弱していたことをおぼえておく必要があります。

100度5分間とはいっても、これは、タンパク質が加熱による影響を直接受けやすい状態同じ結果になるとは限りません。

しかし、卵をゆでれば固まるように、フリーラジカル消去に働く主な活性成分がタンパク質であれば、加熱調理によって変性しますし、調理が長時間に及べば活性を失うことも予想されます。

最近のきのこは品種改良の成果で、長時間煮炊きしてもシコシコした歯ざわりが失われない肉のしっかりしたものがふえています。

ブナシメジなどがそのよい例です。このため、鍋物などでもつい、最初からきのこを入れてぐつぐつ煮てしまうことが多いものですが、もしフリーラジカル消去作用を期待して食べるのなら、煮るにしても焼くにしても、あまり長く加熱せず、短時間でさっと料理して食べるのがコツといえそうです。

血液のフリーラジカル消去作用活性を高く保つことが発がん予防になる

次に私たちは血漿中のどんな成分がフリーラジカル消去活性を高めているのか、その手がかりをつかむために、5%のブナシメジを与えたマウスの血漿を分子量の大きさによって、高分子画分と2つの低分子画分にふるい分け、それぞれの画分のアルコキシルラジカル消去活性を測定しました。

その結果ですが、ビタミンCなどの抗酸化物質を含む2つの低分子画分では、ブナシメジを食べなかったマウスのそれにくらべ、消去活性に有意差が認められませんでした。

これに対して高分子画分ではアルコキシルラジカルの消去活性が有意に高まっており、ブナシメジを食べることで血漿中にフリーラジカル消去活性を持つ高分子物質が増加していることがうかがわれました。

きのこを食べることによって、きのこに含まれる何らかのフリーラジカル消去物質が血漿や全身の細胞に補われ、発ガンの予防に役立っていることを裏づける研究は、現段階ではここまでしか進んでいません。

しかし、先ほどの岡山大学医学部の実験結果と考えあわせれば、ブナシメジを食べると1つの可能性として、その高分子タンパク質が吸収されて血液中に入り、みずからフリーラジカル消去に働くか、あるいは他のフリーラジカル消去物質をふやしているかもしれないと想像されます。

他のきのこについても、同様のメカニズムを想定できます。消化吸収された高分子タンパク質によってフリーラジカル消去活性が高まった血液は、全身の細胞をめぐりながら活発にフリーラジカルの消去に働き、細胞をフリーラジカルの攻撃から守ってくれます。

毎日きのこを食べれば、あなたの血液は常にフリーラジカル消去活性の高い状態に保たれ、このことがガンや動脈硬化などの生活習慣痛(成人病)の予防につながると考えられます。

事実、きのこの常食が発ガンを防ぐことは、エノキタケについては疫学調査によって、ブナシメジについてはこの後のマウスを使った実験によっても証明されているのです。

血液のフリーラジカル消去活性を高めるブナシメジ

このESR法で確認できたことを、かいつまんでいえば、実験的に発生させたスーパーオキシドやヒドロキシルラジカルにきのこの抽出液を加えると消去作用を発揮するということでした。

その主な活性成分が高分子のタンパク質である可能性も明らかになったわけですが、ESR法でわかったのはここまでで、きのこを実際に食べたときにその成分が私たちの体内に吸収され、細胞の内外でフリーラジカル消去作用をたしかに発揮してくれることが証明されたわけではありません。

そこで、私は静岡県立大学薬学部の佐野満昭先生と共同で、この点を確かめるべく次の段階の実験を試みました。
用いたのはブナシメジ(商品名「やまびこほんしめじ」) です。ブナシメジを乾燥粉末にしたものを10%含むエサをマウスに与えて26日間飼育したあと、マウスから血祭(血液から血球成分を除いた残りの液体) を採取します。

ブナシメジを含まないエサで飼育したマウスからも血祭を採取して、2つの血祭の間に、アルコキシルラジカルおよびペルオキシルラジカルの消去作用の点で差がみられるかどうかを測定したのです。

細胞膜や細胞の内外でフリーラジカル消去作用を発揮するビタミンC、E、β-カロテンなどの抗酸化物質は、血液によって細胞に供給されるのですから、血渠中にはこれらが成分として溶けこんでおり、一定のフリーラジカル消去活性をもともと持っています。

海外で行われたいくつかの疫学調査をみると、血中ビタミンE濃度や血中β-カロテン濃度の低い人に肺ガンなどが高率で発生しており、これらは血祭のフリーラジカル消去活性が発ガンを左右する証拠とみることができます。

その血漿のフリーラジカル消去活性がブナシメジを食べることによって高まるかどうかをマウスを使って調べたわけです。その結果、ブナシメジを食べなかったマウスの血祭は、実験的に発生させたアルコキシルラジカルの46%を消去していることがわかりました。

これに対して、ブナシメジを食べたマウスでは消去率が59%にのぼり、血漿の消去活性が有意に高まっていたのです。

この実験で意を強くした私たちは、今度は先ほどの半分、つまり5%のブナシメジを含むエサをマウスに35日間与え、血漿に含まれる過酸化脂質の変動を観察しました。

「血中過酸化脂質」は人間ドックなどの検査項目のなかにもとり入れられていますので、聞きおぼえがあるかもしれません。血中過酸化脂質は、血液中を流れるコレステロールや中性脂肪などの血中脂質をフリーラジカルが酸化したときなどに発生します。動脈硬化では、こうして生じた過酸化脂質が血管壁に沈着しますので、人間ドックではこの借が動脈硬化のパラメーターとして用いられているのです。

実験ではそれを、フリーラジカルによる血中脂質の酸化が、ブナシメジを食べることで抑制されたか、つまりフリーラジカルの消去活性が高まったかどうかのパラメーターとしてみたわけです。

結果は、ブナシメジを食べたマウスの血漿は、食べなかったマウスにくらべ血渠過酸化脂質が約23%も低下していました。これらの結果から、ブナシメジを毎日食べる習慣は、おだやかな効果ではあるが、血漿のフリーラジカル消去活性を高めに誘導し、過酸化脂質を減らす効果があることが証明されたのです。