ビタミンCをはるかにしのぐエノキタケとヒラタケの成分

同様に、各きのこのヒドロキシルラジカル消去作用を示したものがあります。ヒドロキシルラジカルに対しても、各きのことも抽出液の量をふやすのに伴ってより高い消去率を示していますが、50%消去量で比較すると、シイタケ、マッシュルーム、ナメコなどはレモン汁よりも多くの量が必要とされ、つまりレモン汁よりヒドロキシルラジカル消去作用が低いことがわかりました。

スーパーオキシドに対してはレモン汁の10倍の消去作用を発揮したマッシュルームが、不思議なもので、ヒドロキシルラジカルに村しては逆にレモン汁の10倍ほどの消去作用しか発揮していません。

また、ナメコはスーパーオキシド、ヒドロキシルラジカルいずれに村してもレモン汁よりも消去作用が劣っていましたが、これは抽出液のつくり方がナメコの活性成分を十分に引き出すのに適さなかったためかもしれません。ところで、この実験でも、エノキタケとヒラタケは、レモン汁をはるかにしのぐ消去作用を示していたのです。

2つの実験と考えあわせると、エノキタケとヒラタケはスーパーオキシド、ヒドロキシルラジカルをともに消去するすぐれた抗酸化食品といえそうです。消去作用の強さからみて、これらのきのこはビタミンCをはるかにしのぐ何か強力な抗酸化物質を含んでいることが想像されるのです。

マッシュルームのスーパーオキシド消去作用はレモン汁の10倍

さて、そのESR法によって、食用きのこの抽出液がスーパーオキシドやヒドロキシルラジカルをはたして消去するかどうかを調べる実験が岡山大学医学部で行われました。

エノキタケ、シイタケ、ヒラタケ、ナメコ、マッシュルームなどにそれぞれ5倍量の水を加えて十分にすりつぶし、遠心分離器にかけて得た液体が、抽出液として実験に用いられました。

同時に、ビタミンCを多く含むレモン汁でも実験を行い、フリーラジカル消去作用が比較されました。きのこ抽出液を加えない場合のスーパーオキシド発生量を100として、それがきのこ抽出液を加えることでどのくらい消去されたかを実験しています。

どのきのこも、抽出液の量をふやすのに伴ってスーパーオキシドに対してより高い消去率を示しています。これだけでも、きのこにスーパーオキシド消去作用があることが証明されたわけですが、問題はその作用の強さです。各きのこの作用の強さを比較する目安として、スーパーオキシド発生量の帥%を消去するのに必要なきのこ抽出液の量を算出した実験もあります。

実験的に発生させたスーパーオキシドの翌ルを消去するのに、レモン汁なら6.3 mgが必要ですが、ナメコを除くきのこはどれも、レモン汁よりはるかに少ない量で消去していることがわかります。

特にマッシュルーム、ヒラタケ、エノキタケは、レモン汁の土10倍程度の量で、同じ量のスーパーオキシドを消去しています。
このことは、逆にいえば、マッシュルーム抽出液とレモン汁の効果を同じ量で比較すれば、マッシュルームはレモン汁の川倍量のスーパーオキシドを消去できることを示しているのです。

フリーラジカルが消去される

発ガン物質などの刺激で、細胞の周辺にフリーラジカルが発生して遺伝子や細胞膜を傷つけているといわれても、あまりピンとこないかもしれません。
細胞を構成している物質に分子レベルで起こる化学反応の話なので、無理もありません。

専門の研究者でさえ、このフリーラジカルを捉える実験方法の確立には苦労しているのです。そうして確立されたフリーラジカルの測定法の1つに、ESR法(電子スピン共鳴法)があります。

フリーラジカルが不対電子を持つためにわずかながら磁気を帯びている性質に着目して、この磁気をESR装置で捉えることにより、フリーラジカルの発生量を心電図や脳波のような波形の高低として知ることができます。ESR装置のなかで実験的にフリーラジカルを発生させたときにできる波形の高さが、ビタミンCを加えると低くなったとすれば、発生したフリーラジカルがそのぶんだけ消去されたことを意味します。

波形がまったくの平らになれば、ビタミンCによってフリーラジカルが完全に消去されたことを示します。ちなみに、フリーラジカルが「消去される」という耳慣れない表現は、このESR法に由来するのです。

皆さんには、細胞の内外に発生したフリーラジカルという有害物質がビタミンCによって「除去される」とか「とり除かれる」というほうがわかりやすいかもしれませんが、

こうした表現はやや正確さに欠けます。ESRの捉えたフリーラジカルの波形がビタミンCによって平らになったとき、そこで起きたことは、フリーラジカルの性質を帯びた物質そのものがどこかに消えてなくなった、ということではありません。

それは、フリーラジカルがビタミンCから電子を1個もらうことによって安定した物質に変化し、フリーラジカルとしての性質を失ったことを意味するのです。波形の高さによって示されたその性質が、消しゴムで消したかのように消え失せる様子をさして「消去される」といっているわけです。