特異的免疫の担い手は体内を流れる1兆個のリンパ球

免疫システムについてややくわしく知っておくために、ここで私たちの体を、仮想の巨大な一国にたとえてみましょう。

この国では、必要な食糧を海外から輸入する貿易(胃腸)や、食品を加工して保存する技術(肝臓)、食糧を全国に流通させる道路網(循環器系) などが発達していて、60兆にものぼる国民が飢えることなく生活する仕組みが成り立っています。
あらゆる仕事は世襲制で、老いて死んでゆく者(細胞)があると新しく生まれた者がその仕事を受け継ぎ、社会に一定の秩序が保たれています。

この国の弱点の1つは、乏しい食糧資源を海外からの輸入に頼っていることです。諸外国とのたえざる交流(呼吸や食事) によって、必要な食糧資源とともに、社会秩序をおびやかす外敵がたえずこの国に侵入して来るのです。

このような外敵の侵入に備え、全国の道路網に沿うようにして「リンパ管」と呼ばれるもう1つの道路網が形成され、血管やリンパ管の中を1兆~2兆もの「リンパ球」という警備隊が巡回パトロールに当たっています。

リンパ管のところどころ太くふくらんでいる場所は「リンパ節」とか「リンパ腺」と呼ばれる、この警備隊が集合する溜まり場です。外敵と闘う兵士にはリンパ球のほかにも「好中球」や「マクロファージ」などがいて、これらの防衛軍は「白血球」と総称されています(図2)。たとえば細菌という外敵が侵入してくると、まっ先に駆けつけて退治するのが好中球です。

好中球は白血球のなかで最も数が多く約60%を占めている歩兵で、細菌と取っ組み合いをして最後は丸飲みにしてしまうため、その働きは「食作用」などと呼ばれます。その寿命は約8日と短く、生まれて闘っては次々に死んでゆきます。傷口からあふれ出す白い膿は、こうして細菌との闘いを終えた好中球の死骸なのです。

白血球のなかで最も大柄なのが、単球と呼ばれる兵士たちです。単球は血管からリンパ管に入り、リンパ節に移行すると、マクロファージと呼ばれる不定形の細胞に変身し、好中球の10倍以上といわれる強力な食作用を発揮します。

マクロファージ1人で好中球10人分の働きをするというだけでなく、好中球の手に負えないよろい鉄の鎧を着こんだような外敵でも、鎧もろともこなごなに噛み砕いてしまいます。あとでお話しするように、マクロファージのこの食作用はガン細胞に対する攻撃でも重要な役割を果たします。

好中球が歩兵なら、マクロファージは槍を持った騎兵ほどの破壊力がありますが、決まった外敵だけに狙いを定めて攻撃を仕掛けるのでなく、外敵と見れば誰彼となく出会いがしらに闘いを挑む点では好中球と同じです。マクロファージによるこうした防御システムは「非特異的免疫」と呼ばれます。これに対して、決まった外敵だけを特異的に攻撃する防御システムも、います。
この国には備わっています。この「特異的免疫」の主役がリンパ球です。

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