社内でもチョコレート担当は元気いっぱい
チョコレートとの出会いは、学生時代。私は陸上の400メートルの選手だったのですが、試合前日に、当時はまだ高価だったチョコレートをよく食べていました。そういうときは、成績がよかったですね。その後、明治製菓に入社して約40年、チョコレートやココアの生産、研究、商品企画に携わってきました。プロとしてチョコレートを食べ、ココアを飲んだりしてきたわけです。平均すると、普通の板チョコ1枚ぐらいに相当するカカオを、毎日食べ続けてきているのではないでしようか。
25年ほど前から出張で原産国に足を運ぶようになってから、今度は、カカオの歴史に強く引かれるようになりました。もともとマヤ文明に興味を持っていたことや学生時代にスペイン語を勉強していたことも影響したのでしょう。出張のたびに仕事の合間をぬって、カカオの歴史を訪ね歩きました。紀元前1100年ごろの地層から、すでにカカオの殻(カカオポット) の繊維が見つかっています。カカオはそれぐらい古い歴史を持っているのです。
リラックスタイムに欠かせないカカオ
カカオには、晴好品としては珍しく食物繊椎が豊富に含まれていることは、実は、20年ほど前から指摘されていたことです。4年ほど前、明治製菓の食料総合研究所の所長に就任してから、本格的にカカオの成分についての研究を始めました。きっかけになったのが、ココアバター。人間の体温に近い温度でさっと溶け、まるで、人間のためにつくられたかのような組成を持っていること、また酸化しにくい安定した油脂であることは、経験的に知っていました。
これらが研究の鍵になると考えたのです。大学の研究所の協力も得て、半年後ぐらいからさまざまなデータが出てきました。
この結果、ココアバターがコレステロールを下げる効果があることや、カカオにはアルコール性の潰瘍を防止する成分が含まれていること、ミネラルのバランスが非常にいいことなどがわかってきました。
古代メキシコでは、不老長寿の薬として珍重されたり、「神々の食べ物」と呼ばれたりしていたカカオですが、歴史が古く、それだけ長く食べ続けられている食物は人間に合うようにできているのだということを実感します。オフィスではコーヒーを飲みますが、自宅ではココア。冬は電子レンジで温めた牛乳でココアをつくります。夏は、冷たい牛乳でも溶ける冷用ココアをお勧めします。私が開発担当の責任者だったときに開発した製品ですから(笑)。とくに、仕事を終えて帰宅して、ほっと一息、というときには、やはりココアがピッタリだと思います。