エノキタケ 糖たんぱく がT細胞を活性化する

エノキタケ 糖たんぱく がT細胞を活性化する

エノキタケ 糖たんぱく がT細胞を活性化する作用があります。これがガンの増殖を抑制します。マウスに植えつけたガンの増殖がエノキタケの糖タンパク(EA6)を摂取することによって、最大59%も阻止されるのを確かめました。しかも、EA6にはガン細胞を直接破壊する細胞障害性がないことなどから、EA6によるガンの増殖抑制作用は、免疫システム(本章で用いた言葉でいえば、治安維持システム) の賦括を介してもたらされることを明らかにしました。そこから先、EA6 がどのようにして免疫システムを賦活するかのメカニズムはまだ解明されていませんが、少なくとも次のような事実はわかっています。

エノキタケ 糖たんぱく

エノキタケ 糖たんぱく
エノキタケ 糖たんぱく

マウスにサルコマ180を二度にわたって移植すると、そのガン細胞の増殖を抑えこむためにリンパ球のT細胞がくたびれ、活性が著しく低下してきます。

ところが、この二度の移植の間にEA6を1日10 mg(体重1kg当たり)摂取させたマウスは、T細胞の活性の低下を防げる傾向を示したのです。

では、EA6の摂取がどのようにしてT細胞を活性化したかということになりますが、別の実験ではEA6の摂取によって、マクロファージの活性が高まり、ヒトのB細胞に相当する抗体産生細胞の数がふえることも確認されています。これらの結果から、消化吸収されたEA6の断片(またはEA6そのもの)に対して食作用を発揮したマクロファージが活性化され、その活性化マクロファージがT細胞などを刺激して治安碓持システム全体を底上げするものと推測することもできるでしょう。

エノキタケについては、実際に私たちがエノキタケを食べた場合にも、EA6の断片が消化吸収され、このようなメカニズムで体内の治安維持システムを賦活しているにちがいないことが、疫学調査の結果からも裏づけられています。

では、他のきのこたちはどうでしょうか。熱水抽出物をマウスのおなかに注射すると、サルコマ180の増殖阻止率でエノキタケと同等もしくはそれ以上の効果を示したマツタケ、ナメコ、シイタケなどにも私たちは治安維持システムの賦清作用を期待できるのでしょうか。

その可能性はあると思います。というのも、EA6と構造はまったく異なるものの、糖とタンパク質がさまざまな形で結びついた多種類の糖タンパクを、これらのきのこも含んでいるからです。

熱水抽出物をマウスのおなかに注射することによってガンの増殖が阻止されたのですから、この実験だけでも、熱水抽出物が免疫賦活に働いている可能性が高いといえますが、その作用をもっと明白にするには、少なくとも次の2つの研究が必要です。第一に、熱水抽出物を注射した際、免疫のパラメーター(リンパ球の活性、数など) がどう動くかを調べること。

そして第二に、熱水抽出物の注射でも経口投与でもなく、きのこそのものを食べた場合に、免疫賦清作用が得られることを証明することです。後者の証明のために、どなたかにきのこを食べてもらい、その前後に採血して免疫のパラメーターを調べることは、実際問題、臨床的にはほとんど不可能です。

そこで、エノキタケについて行ったような疫学調査が参考になりますが、その場合、あるきのこをよく食べる人のガン死亡率が低いことが疫学調査で証明されたとしても、そのガン死亡率の低下がきのこの発ガン抑制効果に起因するものか、あるいはガンの増殖抑制効果に起因するものか、判然としないのが難点です。

むしろマウスにきのこ自体を食べさせて、移植したガンの増殖が抑えられれば、そのきのこけつの免疫賦清作用を直接証明することになるでしょう。

エノキタケの糖たんぱく質とT細胞活性化のメカニズム

エノキタケの免疫賦活作用には、主に以下の2種類の成分が関与していると考えられています。

  1. β-グルカン: きのこに広く含まれる多糖類の一種で、マクロファージやNK細胞といった免疫細胞を活性化します。

  2. 糖たんぱく質: エノキタケ特有の成分として注目されています。

エノキタケに含まれる「EA6」と呼ばれる糖たんぱく質(分子量3万以下のタンパク多糖体)が、特にがんの発生を抑える効果を持つことが明らかになっています。このEA6は、T細胞などの免疫細胞に直接働きかけ、その活性を高めることで、がん細胞に対する生体防御機能を強化すると考えられています。

T細胞は、リンパ球の一種であり、免疫システムの司令塔のような役割を担っています。がん細胞やウイルス感染細胞を認識し、直接攻撃したり、他の免疫細胞に指示を出して攻撃させたりすることで、体内の異常な細胞を排除する重要な役割を果たします。エノキタケの糖たんぱく質がT細胞を活性化することは、この生体防御機構を強化することにつながります。

エノキタケのその他の免疫賦活・抗がん作用

エノキタケには、T細胞の活性化以外にも、以下のような免疫賦活作用や抗がん作用が報告されています。

  • ナチュラルキラー(NK)細胞の活性化: NK細胞は、がん細胞やウイルス感染細胞を初期段階で攻撃する重要な免疫細胞です。エノキタケの成分は、NK細胞の働きを高めることが示唆されています。

  • マクロファージの活性化: マクロファージは、体内に侵入した異物やがん細胞を捕食・消化する役割を持つ免疫細胞です。エノキタケの成分は、マクロファージの活性を高め、サイトカイン(免疫調節物質)の産生を促すことがあります。

  • 発がん抑制効果: 長野県で行われた疫学調査では、エノキタケをよく食べる人ほどがんの発病率が低い傾向が報告されています。特に、エノキタケ栽培農家では、一般の県民と比較してがんによる死亡率が著しく低いことが示されています。

これらの効果は、エノキタケが持つβ-グルカンや特有の糖たんぱく質、その他の機能性成分の相乗効果によるものと考えられます。

日常生活での取り入れ方

エノキタケは、一年を通して手に入りやすく、様々な料理に活用できるきのこです。加熱しても成分が損なわれにくいとされており、毎日継続して摂取することで、その健康効果が期待できます。例えば、「えのき氷」のように加工して摂取する方法も注目されています。

エノキタケ ガン予防効果 暑い夏にエノキを食べない家庭にはガン死亡者が多い

きのこ

免疫 加齢 により低下していく

免疫 加齢

免疫 加齢 により低下していき、さらに弱体化します。加齢により免疫システムは弱体化するということです。このようにガン細胞を標的とするキラーT細胞やNK細胞が、私の体にも、あなたの体にも備わっています。なぜ私たちの体は、こんな仕組みを備えたのでしょうか?

免疫 加齢 により低下していく

発ガンのメカニズムについて紹介しました。ガン化の引き金は、細胞の分裂増殖をコントロールして私たちの体を生命として成り立たせている遺伝子のなかにありました。

そして、その引き金をひくのは、私たちが生きていくのに欠かせない酸素が不安定になった活性酸素でした。ガン細胞を排除する治安維持システムを私たちの体が備えているということは、私たち人類がガンになる可能性をいつも持っている動物であることを物語っているといえないでしょうか。

必ずガンになるといっては語弊がありますが、私たちの体内では一生の間に、一度ならずガン細胞が生まれてはリンパ球の働きで排除されているにちがいないということです。

私たちの体を構成する60兆個の細胞のうち、一生の間にガン化する可能性のある細胞が100億個ほどあるだろう、と見積もっている研究者もいます。その100億個すべてがガン化するわけではないにしても、私やあなたの体内にすでに1個や2個はガン細胞ができていても不思議はないのです。

ガン細胞が1個や2個であれば、マクロファージやNK細胞の出動だけでガン細胞を破壊し、その芽を摘むことができると考えられます。もしマクロファージやNK細胞の監視をかいくぐってガン細胞が活発に増殖し始めれば、ヘルパーT細胞やキラーT細胞がガン細胞を包囲し、特異的免疫による攻撃が開始されます。

私やあなたが今日までガンにならずにすんできたということは、体内にガン細胞がまったくできなかったというよりも、体内にできたガン細胞がこうした免疫監視機構すなわち治安維持システムのおかげで速やかに排除されてきた結果と考えるほうが自然です。

ところが、その頼みの綱の治安維持システムは、体の老化に伴い、急速に弱体化することが知られているのです。NK細胞の活性(細胞障害怪)の加齢変化です。

細胞障害性とは、ガン細胞を攻撃して破壊する能力と思っていただけばいいのですが、NK細胞の細胞障害性は20歳前後をピークとして、あとは坂を転がり落ちるように低下しているのがわかります。

では、ヘルパーT細胞やキラーT細胞による特異的免疫はどうかといいますと、やはり加齢に伴い、胸腺が萎縮して機能が衰えることが知られています。

胸腺は未成熟のT細胞にスバルタ教育を施し、高度に特異的な免疫機能の担い手として送り出す教育機関ですから、胸腺の機能が低下すれば、送り出されるヘルパーT細胞やキラーT細胞たちも、ガン抗原を十分に認識できなくなったり、その数自体も減るなど、働きが十分ではなくなるのです。

ガンの原因は、発ガン物質などの外因よりも、むしろこのような体内の治安維持システムの弱体化にあるという見方もできるのです。

正常細胞の発ガンの場面についていえば、体内に発生するフリーラジカルを速やかに消去して、ガン化の可能性がある100億個の正常細胞のうち実際にガン化する細胞を1個でも少なくすることが、ガンの予防になります。

しかし同時に、100億個のうち数個がすでにガン化し、活発に増殖を始めた場面をも想定しておかねばなりません。この場面では、治安維持システムを賦括化し、その弱体化をくい止めることがガンの予防につながると考えられるのです。

低下した免疫力を高めるためには

健康的な食事

バランスの取れた食事:

  • ビタミンC: 柑橘類(オレンジ、レモン)、キウイ、ピーマン、ブロッコリーなど。
  • ビタミンD: 魚(サーモン、マグロ)、キノコ、強化乳製品。
  • 亜鉛: 肉類(牛肉、豚肉)、ナッツ、種子、全粒穀物。
  • プロバイオティクス: ヨーグルト、キムチ、納豆、味噌などの発酵食品。

2. 定期的な運動

適度な運動:

  • 有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリング)を週に150分程度。
  • 筋力トレーニング(軽いウェイト、プッシュアップ)を週に2回以上。

3. 十分な睡眠

良質な睡眠:

  • 一晩に7〜9時間の睡眠を確保する。
  • 就寝前の1時間はスクリーンタイムを控える。
  • 寝室を快適な温度に保つ。

4. ストレス管理

ストレスを軽減する:

  • 瞑想、深呼吸、ヨガなどのリラクゼーションテクニックを取り入れる。
  • 趣味や友人との交流を楽しむ時間を確保する。
  • 適切なカウンセリングやサポートを受ける。

5. 適切な水分補給

水分補給:

  • 一日に約2リットルの水を飲むことを目標とする(個人差あり)。
  • カフェインやアルコールの過剰摂取を避ける。

6. 健康的な体重の維持

適正体重の維持:

  • 適度な食事と運動で健康的な体重を保つ。

7. 良好な衛生習慣

感染予防:

  • 手洗いをこまめに行う。
  • 人混みを避ける、マスクを着用するなどの予防策を取る。

8. 禁煙と節酒

有害習慣の改善:

  • タバコをやめる。
  • アルコール摂取を控えめにする(適度な飲酒)。

9. 日光浴

ビタミンD生成:

  • 日中の適度な日光浴(ただし、紫外線対策を忘れずに)。

10. 予防接種

ワクチン接種:

  • 定期的なインフルエンザワクチンなど、必要な予防接種を受ける。

まとめ

これらの方法を組み合わせることで、免疫力を高め、健康を維持することができます。自己ケアを継続的に行うことが重要です。

きのこ

T細胞 胸腺 で鍛えられて分化する

T細胞 胸腺

T細胞 胸腺 で鍛えられて分化します。T細胞は骨髄で生まれたあと 胸腺 へ送られて成熟T細胞となります。胸腺は、血管の道路網の中心である心臓のそばにある小さな器官ですが、T細胞はここで特異的免疫の担い手としてのスバルタ教育を受け、それぞれちがった役割を分担する数種類の精鋭部隊に分化するのです。

T細胞 胸腺 で鍛えられる

たとえばヘルパーT細胞と呼ばれる部隊は、マクロファージが食作用によって認識したガン細胞のかけら(抗原)をマクロファージから受けとり、これをB細胞やキラーT細胞に示します。

特異的免疫が非特異的免疫と異なるのは、標的をしっかり見定めて攻撃を仕掛ける点にありましたが、その特異的免疫に欠かせない抗原認識をマクロファージが行い、ヘルパーT細胞が仲介しているのです。

ヘルパーT細胞は同時に、インターロイキン2と呼ばれる物質を血中に放出します。このインターロイキン2は、B細胞に働いて抗体の産生を助けたり、次に述べるキラーT細胞に攻撃命令を出したり、NK細胞を活性化したりと、治安維持システム全体を賦活する作用をするのです。

ヘルパーT細胞がこのように特異的免疫のすぐれた「助っ人」として働くのに対して、キラーT細胞は名前の通り「殺し屋」の部隊です。それも、ガン細胞や肝炎ウィルスのもぐりこんだ細胞など、私たちの体にとって有害化した異常細胞を排除する専門の殺し屋として働いているのです。

ガン細胞とひとくくりにしていいますが、その顔の特徴(抗原)はガンのできた臓器などによって異なり、いろいろです。
キラーT細胞は、マクロファージからヘルパーT細胞を介して情報を得た特定のガン細胞の顔をおぼえて、いっせいにとり囲み、破壊します。

しかし、このガン細胞の顔を認識するということが、実際にはそう簡単ではないのです。ガン抗原の多くはガン細胞の表面などにあらわれるタンパク質ですが、正常細胞の表面にもよく似たタンパク質が存在します。

ガン細胞はもともと正常細胞から生まれたものですから、抗原となるタンパク質との差異はごくわずかにすぎません。
免疫の専門家はしばしば、自己と非自己という言葉を使いますが、秩序ある社会を構成している60兆の人(自己) から、ひそかに数をふやしつつある撹乱者(非自己)をいかにすばやく正確に見分けるかに、特異的免疫の成否がかかっているのです。

もし自己と非自己の識別がうまくいかないと、キラーT細胞がガン細胞などの異常細胞(非自己) のみならず正常細胞(自己)まで攻撃し始め、膠原病などの自己免疫疾患の原因となることもありえます。

このため、克進したキラーT細胞の働きを抑制するサブレッサーT細胞なる抑え役も、T細胞の一部隊として配備されています。

体内の治安維持システムで、もう一つふれておかねばならないのがNK細胞です。このNK細胞は主に特異的免疫を担うリンパ球のなかでは変わり種で、特異的免疫とマクロファージによる非特異的免疫との中間的な位置にいます。

NK細胞の働きは、特定のガン細胞の抗原を認識して攻撃を仕掛けるキラーT細胞とは異なり、ガン細胞であれば何でも手当たりしだいに破壊する、いわばガン細胞の天敵と考えられています。このため、英語のナチュラル・キラー(直訳すれば「生まれながらの殺し屋」)の頭文字をとってNKというあだ名で呼ばれているのです。

T細胞が胸腺で「鍛えられ文化する」プロセス

T細胞の元となる細胞(T系前駆細胞)は、骨髄でつくられた後、血液に乗って胸腺へとやってきます。胸腺に入ったT系前駆細胞は、そこで厳しい「教育」を受け、初めて一人前のT細胞として働くことができるようになるのです。このプロセスは、主に以下の段階で進みます。

  1. 分化と増殖:
    胸腺に到達した未熟なT細胞(胸腺細胞、thymocyte)は、胸腺内の微小環境(胸腺上皮細胞や線維芽細胞などからなる「ストロマ細胞」が形成する場)で、様々なシグナルを受けながら増殖し、分化の初期段階へと進みます。この段階で、T細胞の表面にあるT細胞受容体(TCR)の遺伝子が再編成され、それぞれ異なる抗原(病原体などの目印)を認識できるよう、多様なTCRが作られます。

  2. 正の選択(Positive Selection):
    TCRが作られたT細胞は、次に胸腺上皮細胞によって提示される自己のMHC分子(主要組織適合性複合体)を適切に認識できるかどうかを試されます。

    • 適切に自己MHCを認識できるT細胞のみが生き残ることを許されます。このMHCとは、細胞が「自分」であることを示す目印のようなもので、このMHCに病原体の断片が提示されることで、T細胞は異物を認識します。

    • 全くMHCを認識できないT細胞や、MHCへの結合が弱すぎるT細胞は、この段階で排除(アポトーシス:プログラムされた細胞死)されます。これにより、機能しないT細胞が無駄に増えることを防ぎます。

  3. 負の選択(Negative Selection):
    正の選択を生き残ったT細胞は、次に「自己を攻撃しない」という最も重要な教育を受けます。

    • 胸腺上皮細胞などが提示する様々な自己抗原に対して、強く反応してしまうT細胞は、自己免疫疾患(自分の体を誤って攻撃してしまう病気)の原因となるため、この段階で排除されます。

    • このプロセスによって、末梢のリンパ組織に放出されるT細胞は、異物のみを攻撃し、自己の組織は攻撃しないという「自己寛容性」を獲得します。

  4. サブタイプへの分化:
    厳しい選択を通過したT細胞は、その後、機能的なサブタイプへと分化します。主なT細胞のサブタイプには以下のものがあります。

    • ヘルパーT細胞(CD4陽性T細胞): 免疫反応の司令塔として、他の免疫細胞を活性化させる役割を担います。

    • キラーT細胞(細胞傷害性T細胞、CD8陽性T細胞): ウイルスに感染した細胞やがん細胞などを直接攻撃し、排除します。

胸腺の役割と加齢による変化

胸腺は、T細胞の「学校」として、私たちが生まれてから思春期頃まで最も活発に機能します。思春期を過ぎると胸腺は徐々に退縮し始め(胸腺の退縮)、T細胞の産生能力も低下していきます。これが、加齢とともに免疫力が低下する一因と考えられています。

このように、T細胞は胸腺という特別な環境で厳しい「教育」を受けることで、私たちの体を守るための高度な識別能力と攻撃能力を身につけているのです。

腸の敵

きのこ