エノキタケを週3日以上食べれば焼き魚を「毒」から「薬」にかえる

まず、焼き魚です。焼き魚を週3日以上食べる習慣は、エノキタケの摂取頻度が少ない人では危険度158~152と、ガンを促進していることが示されました。

しかし、エノキタケの摂取頻度が週3〜4日までふえると、その「毒」が削りとられ、危険度は121まで下がってきます。

そして興味深いことに、エノキタケを週5日以上食べる人では、焼き魚を週3日以上食べる同じ習慣が「毒」から「薬」へと反転し、プラスのお釣りを出していたのです。

みそ汁を毎日3杯以上飲む習慣についても、同じことが観察されました。エノキタケの摂取頻度が少ない人では、みそ汁を1日3杯以上飲む習慣がややガンを促進する方向に作用しています。

ところが、エノキタケを週3日以上食べる人では、みそ汁を1日3杯以上飲む習慣がむしろ著しくプラスに作用していたのです。

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これらの結果から、焼き魚を週3日以上食べる習慣やみそ汁を毎日3杯以上飲む習慣は、エノキタケをあまり食べない人にとっては要注意の習慣ですが、エノキタケを週3 日以上食べる人にとってはガン予防の「薬」になる、といえそうです。「毒」として作用する恐れのある焼き魚やみそ汁を、エノキタケが「薬」に変えたのです。

エノキタケ栽培家庭の胃ガンの死亡率は一般家庭の50%以下

調査は、長野県内の仝エノキタケ栽培家庭2000戸以上を対象に、過去15年間のガン死亡者の有無や食生活などを、訓練された調査員がくわしく調べる訪問聞き取り調査として実施されました。

エノキタケ栽培家庭では一般に、市場に出回らない規格外のエノキタケを頻繁に食べていることが予想されますが、ひと口にエノキタケ農家といっても摂取頻度は家庭ごとに異なるでしょうし、発ガン物質を含む焼き魚を好んで食べる人もいれば、タバコを吸う人もいるはずです。

そこで、調査では、エノキタケの摂取が焼き魚の摂取や喫煙など他の生活習慣とからんで、ガン死亡率にどう影響しているかが分析されました。

ガン死亡率とは文字どおり、ある地域のなかでガンで死亡した人の割合を示すものです。これを租死亡率といいますが、租死亡率は老年人口が多い地域では高く、若年人口が多い地域では低く出やすくなります。

そこで、2つ以上の地域間で、年齢層の人口分布に影響を受けないガン死亡率の差を比較したいときは、それらの地域の年齢人口構成が同じだったと仮定して、租死亡率を補正することが必要です。

こうして求めた死亡率を年齢調整死亡率と呼んでいます。長野県の年齢人口構成を基準としたガン年齢調整死亡率を算出します。

長野県全体では人口10万人に対して160人がガンで死亡するのに対して、エノキタケ栽培家庭では97人しか死亡していなくて、ガン死亡率が39%も低く抑えられていることがわかりました。

男女別にみると、長野県全体と比較した抑制率は男性37% 、女性43% で、いずれも長野県全体との間に有意差が認められました。エノキタケ栽培家庭には男女を問わずガンで死亡する人が少ないことがこれで証明されたのです。特に少なかったのが胃ガン、食道ガンなど上部消化器のガンで、長野県全体にくらべ胃ガンで5%、食道ガンでは実に62% も低く抑えられていました。

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緑黄色野菜を毎日とる食習慣は肉を「毒」から「薬」に変える

では、あなたの今日の食卓に「毒」と「薬」のどちらの作用がまさっているかをどのように診断すればいいのでしょうか?それには疫学調査の結果が大きな参考になります。

がんの予防に関する12カ条」のなかで、唯一、ポジティブな表現をとっているのが「適量のビタミンA・C・Eと繊維質のものを多くとる」の項目ですが、これは国立がんセンター研究所疫学部長らが17年間にわたり全国約27万人を村象に生活習慣と死亡状況を追跡した、大規模な疫学調査の結果などがその背景となっています。

その結果を分析して、緑黄色野菜を毎日食べる人にガンが少ないことを明らかにされ、ガン予防のためには野菜を1日300 g食べ、そのうち100 gを緑黄色野菜でとる、という目安量まで具体的にあげておられます。

ここでいう緑黄色野菜とは、ほうれんそう、小松菜、春菊、にら、せり、ピーマン、ブロッコリー、グリーンアスパラガス、パセリ、さやいんげん、さやえんどう、オクラ、ししとうがらし、かぼちゃ、にんじん、トマトなど、100 g 中にカロチンを600 ㎍以上含む色の濃い野菜のことです。

この疫学調査では、緑黄色野菜と肉類の摂取の関係が、非常に興味深い形で浮き彫りになりました。現在わが国では、毎日欠かさずに肉を食べる家庭がかなりの数にのぼっています。ステーキやトンカツなどのいわゆる肉料理に限らず、野菜妙めにちょっと肉を加えたり、サラダにハムを使ったりを含めて考えると、毎日肉を食べている家庭はふえる一方です。

日本人に大腸ガンがふえ続けている事実が、肉の摂取量の増加に関連しています。肉を食べると、それに伴って腸内にプロモーターの二次胆汁酸がふえるという「主空の面が強調されているわけです。

ところが、研究調査の結果には、肉食を悪者扱いすればするほど、話は簡単でないことが示されています。肉を毎日食べる人が緑黄色野菜を毎日食べない場合には、大腸ガンによる死亡率が著しく高く出ています。

たしかに、これは肉食に伴う「毒」の面が影響を及ぼした結果とみることができるかもしれません。ところが、肉を毎日食べる人でも、同時に緑黄色野菜を毎日食べていれば、肉を毎日食べない人よりもむしろ死亡率が低く出ているのです。

見方を変えて、あなたが緑黄色野菜を毎日食べる人だとしましょう。その食卓に、肉が毎日のぼらないときの大腸ガンによる死亡率は人口10万人に対して約14人ですが、肉を毎日食べるようにしたときの死亡率は4人弱にすぎません。

つまり死亡率が肉を毎日食べない場合の30%以下に抑えられているのです。緑黄色野菜と肉をともに毎日欠かさない食卓では、肉食がむしろガン予防の「薬」として強力に作用していることがこの結果からうかがえるわけです。私は長年の研究の経験から、食用きのこについても同様の大がかりな疫学調査を行えば、きのこがガン予防の「薬」として私たちの食卓に作用しているという結果が明らかになるにちがいないと考えました。

そこで、私はいまや全国一のきのこ生産県となった長野県で、エノキタケ栽培家庭について全県にまたがる大規模な疫学調査をやってみたらどうかと、長野県農協中央会に提案しました。その際、いろいろな提案をし、アイデアも出しましたが、ともかくも、県農協経済連、長野県農村工業研究所、北信総合病院が協力して、全県の疫学調査が実施されることになったのです。

食卓の「毒」を「薬」で帳消しにすr食事の知恵

野菜の発ガン抑制効果を調べるこんな実験が行われました。さまざまな野菜の抽出物から、すでに発ガンを抑制することが知られているビタミンCなどを含む低分子画分をとり除き、高分子画分を分離します。

実験用の正常細胞に、アフラトキシン、Trp-p1、Trp-p2、タバコの煙に含まれるベンツビレンなどの発ガン物質を作用させ、そのままならガン化が引き起こされるところへ、野菜の高分子画分を加えてイニシューションが抑制されるかどうかを調べました。

結果をTrp-p2に対する抑制効果で示せば、なす、82.5% 、きゅうり、75.5% 、ごぼう、67.8% 、大根、48.3%など、漬物になる野菜の多くが高い抑制率を示したのです。

これらの野菜は他の発ガン物質の活性を抑えるのにも幅広く有効で、特になすはアフラトキシンに村して89.1% 、Trp-p1に対して86,2 % 、ベンツビレンに対して76.4 % など、のきなみ高い抑制率を示しました。

つまり、なすなどの漬物は、食べすぎればプロモーターとなる食塩のとりすぎが心配される一方で、食卓に並んだ焼き魚などの発ガン物質の活性を抑制している可能性があることになります(もちろん、あまり塩気の強い漬物はいただけませんが)。

このように、食品に発ガン物質の「毒」が発見されたからといって、その食品そのものを、食べてはいけない「毒」とは必ずしもみなせないのが、食事によるガン予防の複雑でむずかしいところです。

焼き魚を食べなければ、体にとりこむTrp-p1やTrp-p2の量を減らすことはできるかもしれませんが、同時に、大腸ガンなどの予防につながるDHAの摂取も減ることになります。魚の干物のおかずに漬物が加われば、食塩の摂取量がふえ、胃の中でニトロソアミンができるかもしれませんが、同時に、焼いた干物に含まれるTrp-p1やTrp-p2などの活性を強く抑制する野菜の高分子画分を摂取することができます。

たしかに、焼き魚の皮のひどく焦げた部分まで残さずに食べるとか、塩分の強い漬物に相変わらずなみなみとしょうゆを注ぐとかいったことは、12カ条にいわれているとおり、控えるべきでしょう。

しかし、だからといって、焼き魚や漬物そのものを「毒」と決めつけて食卓から遠ざけるのは誤りです。焼き魚や漬物にもガン予防にプラスに作用する「薬」としての面があるように、「薬」としての作用が明らかになった食品をポジティブに食卓にとり入れることです。

そうして毎日の食卓を全体として見渡したときに、「毒」の作用(Trp-p1やTrp-p2、ニトロソアミン、食塩など) の総和よりも、「薬」の作用(DHA、野菜の高分子画分など)の総和のほうが大きく、「毒」の作用を帳消しにしてまだお釣りのくるような食生活を続けていれば、それこそがガンを防ぐ食生活にほかならないのです。

焼き魚は発がん物質を含むが、同時に発がん物質の活性を抑える物質も含まれることを忘れていけない

日本人のガンを臓器別にみると、胃ガンがきわめて多いことが欧米諸国にはない顕著な特徴でしたが、近年、その胃ガンは減少傾向にあります。

その理由は、冷蔵庫の普及により、新鮮な魚や野菜がいつでも食べられるようになり、魚の干物や漬物のような食塩をたっぷり含む塩蔵品の摂取量が減ったことによるものと指摘されています。

そう聞けばなおさら、魚の干物や漬物に手が伸びなくなりそうですが、同時に、次のような事実があるということも知っておくべきです。

胃ガンが減る一方で、欧米に多くみられる大腸ガン乳ガンなどがわが国でも激増してきましたが、その原因として指摘されているのが肉類や乳製品の摂取量の増加です。

大腸ガンを例にとると、肉の摂取量の増加に伴い、肉に含まれる脂肪の消化のために胆汁の分泌がふえます。胆汁の主成分は胆汁酸ですが、胆汁酸は大腸に流れつくと腸内細菌の働きで二次胆汁酸と呼ばれるものに変化します。

この二次胆汁酸が、大腸粘膜にプロモーターとして作用し、大腸ガンをふやしているのではないかと推測されているのです。

大腸ガンを引き起こす強力なイテンエーターをマウスに与えたあと、4週続けてDHA(ドコサヘキサエン酸)と呼ばれる油の成分を飲ませ、大腸粘膜のガン化しかけた異常細胞の数を、DHAを飲まなかった群(対照群と比較した実験があります。

結果は、対照群の異常細胞が122個だったのに対し、DHAを飲んだ群では42個にまで抑制されました。同様に、乳ガンに対してもDHAが発ガン抑制効果を発揮することが、国立がんセンター研究所などの実験で明らかにされています。

サンマ、アジ、イワシなどのいわゆる青魚は、焼き魚にすれば発ガン物質のTrp-p1やTrp-p2が生成する一方で、DHAを豊富に含むのが食品としての大きな特長です。

サンマを焼くとき、火の上にじゅっととしたたり落ちるあの油が、DHAの宝庫なのです。っまり、焼き魚はTrp-p1などの「毒」を含む一方で、DHAという「薬」をも含み、日本人にふえている大腸ガンや乳ガンの予防に役立っている可能性があるということです。