生姜の効能は、冷えだけじゃない!

生姜の効能、効果ベスト18

こうして生姜の「温め効果」は一躍脚光を浴びてきたが、実は冷えをとって体を温める以外にも、たくさんの効能があることをご存知だろうか。
それらを紹介する前に、生姜に含まれている成分について説明しておこう。
生姜(gingerの成分の中で、特に注目されているのが、ビリッとした辛味の主成分であるジンゲロール(gingerol)とショウガオール(shougaol)。
生姜を加熱すると、ジンゲオールはショウガオールに変化する。ジンゲオールには血行促進作用や吐き気をおさえる作用があることがわかっている。さらに、強い殺菌力も併せ持つ。
また、ジンゲロールにもショウガオールにも、抗酸化作用(酸化をおさえる作用)があることも知られている。魚介類や肉類を使った料理に生姜を用いれば、これらに含まれる脂質が酸化するのを防ぐことができるし、体内では、活性酸素を除去することで老化防止効果も期待できる。
また、生姜の皮のすぐ下にある細い管には、精油(特有の芳香を持つ揮発性の油)が含まれている。この精油には、ジンギペロール、ジンギベレン、クルクミン、ピネン、シトラール類、ボルネオールなど、400種類以上もの芳香成分が含まれている。これらの成分の相互作用で、生妻のさまざまな薬効が生まれる。これまで世界中の研究で確立された生姜の効能を一覧表示している

  1. 体を温める…ジンゲオールなどが血行を促進するため、体を温め、冷え性を改善する作用がある
  2. 免疫力を高める…白血球の数を増やし、その働きを促進して免疫力をアップする
  3. 発汗、去痰を促す…血管を拡張して血行をよくする上に、体内のさまざまな管や腺組織を刺激して、発汗や去疾(タンをとり除く)を促す
  4. 咳を鎮める…脳の中枢に作用して、咳をとる
  5. 解熱作用…解熱・鎮痛剤として知られるアスピリンの80%程度の解熱作用があるといわれている
  6. 鎮痛・消炎(炎症を消し去る)作用…1日10~~30グラムの生姜の乾燥粉末を投与することで、リウマチや関節炎に効果があったという実験結果がある。化学薬品の消炎・鎮痛剤には、胃炎などを起こす可能性があるが、生姜は胃壁を守る作用もあるので、その点でも安心
  7. 血液凝固を抑制する…血小板の粘り気をおさえて血液凝固を防ぐ。血栓ができにくくなるので、脳梗塞や心筋梗塞、高血圧などを予防・改善する効果もある
  8. 強心作用…生姜は心筋を刺激して、心筋の収縮力を高め、血管を開いて血流をよくする。脈拍や血圧をゆるやかに下げ
  9. 抗菌・抗ウイルス・抗寄生虫作用…生姜には強い殺菌力もある。風邪ウイルスや気管支炎・肺炎などを起こす細菌類、大腸菌やサルモネラ菌・黄色ブドウ球菌などの食中毒菌、カンジダや水虫などの其菌に対して、抗菌作用が働く。回虫やフィラリアのほか、魚に寄生しているアニサキスなどの寄生虫も駆逐する。だから、寿司に添えられるガリ(生姜の甘酢漬け)は一緒に食べたほうがいい
  10. めまいや耳鳴りを防ぐ…生姜は内耳の血行をよくして、めまいや耳鳴りを防ぐ働きがある
  11. 血中コレステロールを下げる…生姜に含まれるジンゲロールが、胆汁の排泄を促進するため、血液中のコレステロールが低下する
  12. 生殖機能の改善…血行不良を改善する作用がある生姜は、子宮、卵巣への血行をよくして、その働きを促し、月経を軽く、正常にする効果もある。不妊症にも効果を発揮する。男性の精子の連動率を高めるともいわれている
  13. 酸化の防止…体内で活性酸素を除去する働きも期待できるため、がんやアレルギー、免疫疾患などのほか、老化の予防や改善にも役立つ
  14. うつ病を防ぐ…うつ病の治療に使われる半夏厚朴湯の成分にもなっている
    半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
  15. 解毒を促して、体内を浄化する…血液の循環をよくすると同時に、発汗や排尿、排便を促す作用がある。体内の毒素を排出し、浄化する

がんに対する効能も

病気は「気・血・水」の滞り、つまり体の冷えから起こるが、生姜はその解消に大いに役立つことがわかった。生姜には体を温める作用があり、さらに、血液の循環をよくして体内の細胞を元気にし、毒素を排泄して血液をはじめ体内をきれいにしてくれる。

さらに最近では、がんに対する効能も注目を集めている。2003年10月、アメリカで開催された「米国がん研究学会」で、ミネソタ大学のアン・ボード、ジガン・ドン両研究者らが行った興味深い実験結果が発表された。
人間のがん細胞を植えつけたマウスを、生姜の辛味成分である「ジンゲロン」を与えた群と与えなかった群に分けて追跡調査したところ、「ジンゲロン」を与えたマウス群のほうが、できた腫瘍の数が少なかったというのである。
生姜の成分が免疫力を強化し、抗酸化作用を発揮して、がん細胞の増殖を食い止めたと考えられる。まさに生姜は「百邪を防ぎ、百邪を治す」食材なのだ。

生姜の冷え取り力の実力はやっぱりホンモノ。

生姜の冷え取り力の実力

世界中で愛される優秀な食品

現代人の「冷え人口」の急増を背景に、日本で空前のブームを巻き起こしている生姜ですが、欧米や中国、インドなどでも古くから種々の効果がある食材として重用されてきました。日本でも漢方薬に生姜が配合されていない薬はないほど重要な食材でもあります。

生姜の原産地はインドですが、紀元前2世紀には、すでに海路で古代ギリシャや古代ローマに伝えられたと歴史書には記載があります。
陸路では、ペルシャなどを経由してトルコ、ヨーロッパへと運ばれました。インドの伝承医学「アーユルヴェーダ」の書物の中には、生姜のことを「神からの治療の贈り物」とした記述を見つけられるし、イスラム教の聖典「コーラン」にも、「天からの聖なるスピリット」と表現されています。

「ピタゴラスの定理」で有名なギリシャの哲学者ピタゴラスも、生姜を消化剤や駆風剤(お腹のガスをとる薬) として使用したといわれるし、それに続く古代ローマ人たちは食中毒などの解毒剤として利用していました。
さらに中世以降は王家や貴族たちの富や権力の象徴となりました。

16世紀のイギリスでは、生姜1ポンド(約450g)が羊1頭と交換されていたことからも、いかに貴重品であったかがわかります。

また、イギリスでペストが流行した際、市民の3 分の1が死んだのに、生姜をたくさん食べていた人は死ななかったという事実を知った国王ヘンリ18世は、ロンドン市長に「ジンジャーブレッド(生姜パン)」を作るように指示した。このことからその後、イギリスをはじめとする欧米では、ジンジャーブレッドや人の形をしたジンジャークッキーが盛んに食べられるようになつたといわれています。
2千年以上前から、生姜のたぐいまれな薬効は、人々を驚嘆させ、助けてきました。

漢方薬の7割に生姜が含まれている

中国でも、生姜は漢方医学に欠かせない存在として広く利用されてきました。原典といううべき書物「傷寒論」にも、「生姜は体を温め(血流をよくし)、すべての臓器の働きを活発化させる。体内の余分な体液(水の滞り)をとり除き、気を開き(気の滞りをとり…」といった意味のことが書かれています。

明の時代に書かれた『本草綱目』にも「生姜は百邪(さまざまな病気)を防御する」という記述があります。さらに、漢方薬の中で、医師が処方している医療用の漢方百数十種類のうち、何と7~8割に生萎が使われています。漢方薬は、基本的に体や胃腸が冷えている状態では吸収されにくいのです。そこで代謝を上げる生姜を配合するというわけです。

それまで何気なく食べていた生姜に深い関心を抱き、敬意の念を持って食すようになったのは、これがきっかけだったように思います。風邪薬として有名な「葛根湯」や、胃薬の安中散、肝臓の薬の小柴胡湯、などにも生姜が配合されています。

漢方医学ではこの「気・血・水」が滞るとあらゆる疾病が起こる原因と考えます。「血の滞り」は「疹血」といい、いわゆる「血液ドロドロ」の状態。心臓や血管系の働きが低下して血流の流れが悪くなると、その部分の細胞は正常に働かなくなりあらゆる病気の原因となる。放っておくと炎症や腫瘍、心筋梗塞や脳梗塞など深刻な病気に進んでしまいます。

「体がほてる」や「赤ら顔」「大便の色が黒く臭いがきつい」「下肢静脈痛がある」などは、疹血で血液が滞ったために表れる代表的なサインです。
つまり、冷えは血液の汚れにも直結します。

また、「水」の流れの悪さによる滞り(水毒)については「気の滞り」とは、目に見えない生命維持のためのエネルギーが滞ること。「元気」「ヤル気」「気合い」など、気という字がつく言葉は日本語にも非常に多数あります。
新陳代謝を促したり、体温を正常に保つために欠かせない原動力といわれ、気の流れが邪魔されて滞ると、はじめは「何となくスッキリしない」「体のあちこちが痛む」「お腹が張っている」などの不快感として表れます。ひどくなるとうつ病や不眠症、慢性疲労症候群などにもなりやすくなります。

生姜にはこれらの流れをよくし、健康を増進する万能の作用があるのです。

「生姜は冷えをとって、体を温める」ということに異論を唱える医師や栄養学者はいないでしょうが、西洋医学一辺倒だった当時は、そんな民間療法のようなことを本気で主張する医師は本当にわずかでした。
しかし、あらゆる病気や症状の根源には「冷え」が潜んでいることに気づいた私は、日常、手軽に体を温めるものはないかと探し続けていたのです。
幸い、私には漢方薬の知識があったので、体を温める漢方薬を処方しながら、その多くに含まれている生姜の薬効を手軽に利用できる方法はないかと考えました。
そして熟い紅茶にすりおろした生姜を適量加えた「生姜紅茶」を考案したのです。
この生姜紅茶をクリニックに来る患者さんたちにすすめてみたところ、「手軽だし、ぉいしいし、体調もよくなった」ととても評判がいいのです。

1週間生姜紅茶を飲み続けたところ、合計3.3kgの減量に成功した。これは、生姜紅茶が体熱を上げ、代謝をよくして、発汗や排尿、排便を促したからです。番組放送後には、クリニックの電話が鳴り続け、通常の診療に支障をきたすほどでした。以来、生姜はダイエット代名詞のような食材になったのです。

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(体験談)胃腸が元気になっておいしくなった

さんは、私の本を読んで、出版社宛てにお手紙をくださった。達筆な字で善かれたその手紙によると、更年期のまっただ中にあった50代前半頃から、それまでは無縁だった体の不調に次々と襲われ、ずいぶんご苦労をされたらしい。
う特に胃腸がめっきり弱くなり、胃炎や胃潰瘍、神経性腸炎などを繰り返していたという。病院でもらった薬を飲むと一時的にはよくなるが、少し経つとまた、調子が悪くなる。に留まま一生、胃腸薬を飲み続けなくてはならないのかと、あきらめかけていた頃、私の本を読んで、生姜が胃腸に効くことを知ったという。
「先生の本に、胃が弱い人のみぞおちを触ってみると冷たい、と書いてありましたが、確かに、自分の胃のあたりを触ると、まるで氷が入っているかのようにひんやりと冷たいのです。それまでは「胃腸の不調=冷え」という発想はありませんでしたから、まるで目からウロコでした。それからは寝るときは必ず腹巻きをして、日中も使い捨てカイロなどでお腹を温めるようにしました。と、書いてある。
さらに、生萎紅茶や生姜湯を毎日飲み、梅番茶もよく作って飲んだという。生姜には、胃腸の内壁の血行をよくして、消化吸収を高める作用があることが知られているので、これらを積極的に飲むことで、ずいぶん胃腸にいい効果をもたらしたことだと思う。手紙の続きを紹介しよう。
「生姜はまた、失っていた食欲も呼び覚ましてくれました。ビリッと辛い生妾を料理などに入れると、何でもおいしく感じるようになったのです。
生妻を積極的に食べ、胃腸を温めるようにして、1ヶ月くらい経った頃でしょうか。気がつくと、10年近く悩まされてきた、胃の不快感や空腹時の痛み、食欲不振などの症状がなくなっていました。きっと効果があるはず、と信じてはいましたが、そのあまりの早さには驚きました。
生姜や腹巻きなどで胃腸の病気が治るなら、こんなに安上がりで安全なことはない。軽い腹筋運動や入浴などもとり入れて、さらにお腹の血行をよくしてほしい。