生姜の冷え取り力の実力

世界中で愛される優秀な食品

現代人の「冷え人口」の急増を背景に、日本で空前のブームを巻き起こしている生姜ですが、欧米や中国、インドなどでも古くから種々の効果がある食材として重用されてきました。日本でも漢方薬に生姜が配合されていない薬はないほど重要な食材でもあります。

生姜の原産地はインドですが、紀元前2世紀には、すでに海路で古代ギリシャや古代ローマに伝えられたと歴史書には記載があります。
陸路では、ペルシャなどを経由してトルコ、ヨーロッパへと運ばれました。インドの伝承医学「アーユルヴェーダ」の書物の中には、生姜のことを「神からの治療の贈り物」とした記述を見つけられるし、イスラム教の聖典「コーラン」にも、「天からの聖なるスピリット」と表現されています。

「ピタゴラスの定理」で有名なギリシャの哲学者ピタゴラスも、生姜を消化剤や駆風剤(お腹のガスをとる薬) として使用したといわれるし、それに続く古代ローマ人たちは食中毒などの解毒剤として利用していました。
さらに中世以降は王家や貴族たちの富や権力の象徴となりました。

16世紀のイギリスでは、生姜1ポンド(約450g)が羊1頭と交換されていたことからも、いかに貴重品であったかがわかります。

また、イギリスでペストが流行した際、市民の3 分の1が死んだのに、生姜をたくさん食べていた人は死ななかったという事実を知った国王ヘンリ18世は、ロンドン市長に「ジンジャーブレッド(生姜パン)」を作るように指示した。このことからその後、イギリスをはじめとする欧米では、ジンジャーブレッドや人の形をしたジンジャークッキーが盛んに食べられるようになつたといわれています。
2千年以上前から、生姜のたぐいまれな薬効は、人々を驚嘆させ、助けてきました。

漢方薬の7割に生姜が含まれている

中国でも、生姜は漢方医学に欠かせない存在として広く利用されてきました。原典といううべき書物「傷寒論」にも、「生姜は体を温め(血流をよくし)、すべての臓器の働きを活発化させる。体内の余分な体液(水の滞り)をとり除き、気を開き(気の滞りをとり…」といった意味のことが書かれています。

明の時代に書かれた『本草綱目』にも「生姜は百邪(さまざまな病気)を防御する」という記述があります。さらに、漢方薬の中で、医師が処方している医療用の漢方百数十種類のうち、何と7~8割に生萎が使われています。漢方薬は、基本的に体や胃腸が冷えている状態では吸収されにくいのです。そこで代謝を上げる生姜を配合するというわけです。

それまで何気なく食べていた生姜に深い関心を抱き、敬意の念を持って食すようになったのは、これがきっかけだったように思います。風邪薬として有名な「葛根湯」や、胃薬の安中散、肝臓の薬の小柴胡湯、などにも生姜が配合されています。

漢方医学ではこの「気・血・水」が滞るとあらゆる疾病が起こる原因と考えます。「血の滞り」は「疹血」といい、いわゆる「血液ドロドロ」の状態。心臓や血管系の働きが低下して血流の流れが悪くなると、その部分の細胞は正常に働かなくなりあらゆる病気の原因となる。放っておくと炎症や腫瘍、心筋梗塞や脳梗塞など深刻な病気に進んでしまいます。

「体がほてる」や「赤ら顔」「大便の色が黒く臭いがきつい」「下肢静脈痛がある」などは、疹血で血液が滞ったために表れる代表的なサインです。
つまり、冷えは血液の汚れにも直結します。

また、「水」の流れの悪さによる滞り(水毒)については「気の滞り」とは、目に見えない生命維持のためのエネルギーが滞ること。「元気」「ヤル気」「気合い」など、気という字がつく言葉は日本語にも非常に多数あります。
新陳代謝を促したり、体温を正常に保つために欠かせない原動力といわれ、気の流れが邪魔されて滞ると、はじめは「何となくスッキリしない」「体のあちこちが痛む」「お腹が張っている」などの不快感として表れます。ひどくなるとうつ病や不眠症、慢性疲労症候群などにもなりやすくなります。

生姜にはこれらの流れをよくし、健康を増進する万能の作用があるのです。

「生姜は冷えをとって、体を温める」ということに異論を唱える医師や栄養学者はいないでしょうが、西洋医学一辺倒だった当時は、そんな民間療法のようなことを本気で主張する医師は本当にわずかでした。
しかし、あらゆる病気や症状の根源には「冷え」が潜んでいることに気づいた私は、日常、手軽に体を温めるものはないかと探し続けていたのです。
幸い、私には漢方薬の知識があったので、体を温める漢方薬を処方しながら、その多くに含まれている生姜の薬効を手軽に利用できる方法はないかと考えました。
そして熟い紅茶にすりおろした生姜を適量加えた「生姜紅茶」を考案したのです。
この生姜紅茶をクリニックに来る患者さんたちにすすめてみたところ、「手軽だし、ぉいしいし、体調もよくなった」ととても評判がいいのです。

1週間生姜紅茶を飲み続けたところ、合計3.3kgの減量に成功した。これは、生姜紅茶が体熱を上げ、代謝をよくして、発汗や排尿、排便を促したからです。番組放送後には、クリニックの電話が鳴り続け、通常の診療に支障をきたすほどでした。以来、生姜はダイエット代名詞のような食材になったのです。

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(体験談)胃腸が元気になっておいしくなった

さんは、私の本を読んで、出版社宛てにお手紙をくださった。達筆な字で善かれたその手紙によると、更年期のまっただ中にあった50代前半頃から、それまでは無縁だった体の不調に次々と襲われ、ずいぶんご苦労をされたらしい。
う特に胃腸がめっきり弱くなり、胃炎や胃潰瘍、神経性腸炎などを繰り返していたという。病院でもらった薬を飲むと一時的にはよくなるが、少し経つとまた、調子が悪くなる。に留まま一生、胃腸薬を飲み続けなくてはならないのかと、あきらめかけていた頃、私の本を読んで、生姜が胃腸に効くことを知ったという。
「先生の本に、胃が弱い人のみぞおちを触ってみると冷たい、と書いてありましたが、確かに、自分の胃のあたりを触ると、まるで氷が入っているかのようにひんやりと冷たいのです。それまでは「胃腸の不調=冷え」という発想はありませんでしたから、まるで目からウロコでした。それからは寝るときは必ず腹巻きをして、日中も使い捨てカイロなどでお腹を温めるようにしました。と、書いてある。
さらに、生萎紅茶や生姜湯を毎日飲み、梅番茶もよく作って飲んだという。生姜には、胃腸の内壁の血行をよくして、消化吸収を高める作用があることが知られているので、これらを積極的に飲むことで、ずいぶん胃腸にいい効果をもたらしたことだと思う。手紙の続きを紹介しよう。
「生姜はまた、失っていた食欲も呼び覚ましてくれました。ビリッと辛い生妾を料理などに入れると、何でもおいしく感じるようになったのです。
生妻を積極的に食べ、胃腸を温めるようにして、1ヶ月くらい経った頃でしょうか。気がつくと、10年近く悩まされてきた、胃の不快感や空腹時の痛み、食欲不振などの症状がなくなっていました。きっと効果があるはず、と信じてはいましたが、そのあまりの早さには驚きました。
生姜や腹巻きなどで胃腸の病気が治るなら、こんなに安上がりで安全なことはない。軽い腹筋運動や入浴などもとり入れて、さらにお腹の血行をよくしてほしい。

(体験談)腰痛が生姜湿布でよくなった

55歳のAさんは、年齢よりもかなり若く見える。高原レタス栽培を生業としているので、春夏の間は寝る暇もないほど忙しいが、秋から冬にかけては、比較的のんびりできるらしい。
毎年10月になると、私がやっている伊豆の断食を主とした保養所に、ご夫婦で来るのが、ここ7 ~8年の恒例行事になっていた。断食中でも、いつも元気にゴルフに出かけるA さんだが、前回来たときは、ゴルフセットを持参していなかった。
「おいしい空気を吸ってゴルフをするのは、断食よりも健康にいい」などといっていたAさんがゴルフをしないのは珍しいと思って開いてみると、2か月ほど前、農作業をしていて腰が痛くなり、以来ずっと、腰に違和感があるという。「自分では若いつもりでいても、やっぱりもう若くはないということですよ」などとつぶやく姿は、以前のエネルギッシュなAさんからは考えられない。

これまで病気らしい病気もせず、健康に絶対的な自信があった人ほど、突然襲われる体の不調にはショックを受けるようだ。普通に歩くのには支障がないようだが、疲れると腰に鈍い痛みが出るという。「重たい荷物を持ったり、同じ姿勢を長時間続けていると、腰に電流が走るように痛むこともある」と、顔をしかめている。
奥さんに聞いてみると、A さんが初めて腰が痛くなった日は、前日がとても暑くて、ビールをガブ飲みしたあと、クーラーをガンガンにかけたまま、下着1枚で朝まで寝ていたそう。さらに、その1か月ほどは、「暑いから、湯船につかりたくない」といって、お風呂に入る代わりに朝晩、水シャワーを浴びていたという。腰痛の多くは、下半身の筋肉の衰えに加え、冷えが原因で起こる。私はA さんに、「ここにいる間は毎日、生妻湿布に通うように」と、アドバイスした。私の保養所には、マッサージや生姜湿布を受けられる施設を併設しているのだ。生姜湿布を腰にあてると、血行をよくして腰を温める作用があるのと同時に、鎮痛作用もある。

私のアドバイスを聞き入れたAさんは、7泊8日の断食期間中、毎日必ず、生姜湿布に通った。初日には「腰どころか、体中が温まって、まるでサウナに入っているかのように大王の汗をかきました。
まだ、全身がポカポカしています」と驚いていたが、7日目には「腰の痛みや違和感がきれいになくなりました。これまで、鍼に通ったり、整体をしてみたり、いろんなことをしてもよくならなかったのに、生姜湿布で治るなんて、信じられませんよ」と、大喜びしていた。
すっかり元気になつたAさんは、「来年はゴルフバッグを持って、また必ず来ます」と言って帰って行ったが、そのためにも、体を冷やさず、生姜湿布を自宅でも続けてほしい。体を温める生妻紅茶も飲み続けるようアドバイスした。また、年齢とともに衰えてきた下半身を強くするには、日頃からウォーキングやスクワットなどで鍛えるほか、ゴボウやニンジン、レンコン、ヤマイモなどの根野菜を積極的に食べることもおすすめしたい。ちなみに、腰痛によく使われる漢方薬の「八味丸」にも、ヤマイモが入っている。