価格よりも品質
私は、埼玉県は狭山市の出身。狭山茶の本場です。父親は浪曲師でしたが、母親がお茶屋をやっていまして、私も小さい頃から門前の小僧で、お茶の摘み方から火入れの仕方まで教わったもんです。
お茶とは、そりゃ馴染みが深いんですよ。私自身も家内とここ杉並で、戟前からお茶屋をやってます。
以前、高座でお茶を出してくれる若い衆が「師匠はお茶屋さんだから、楽屋のまずいお茶を飲ますわけにはいかない。失礼にあたる」と思い込んで、半年間、水ばっかり飲まされていたことがあるんですよ(笑)
半年経って、ようやくお茶をいただけるようになりましたが…。
お茶屋だからって、毎日高価なお茶を飲んでるわけじゃありませんよ。もっぱら「茎茶」専門です。手頃な値段の割には煎茶と同じ程度の昧が楽しめるので、気に入っています。
お茶は1 日に20杯は飲んでますかね。300gのお茶缶が1週間もたないくらいですから、相当でしょう。
出がらしのことを「バカ茶」といいますが、これは絶対にいただきません。
茶葉だけは、マメに入れ替えて飲むようにしています。お茶をおいしくいただくには、茶葉をたっぷりと入れるのがコツ。最後のひとつまみが、お茶をおいしくしてくれる。「味があがる」っていうんですかね。私は熟めの濃いお茶が好きなんですが、一番おいしく感じるのは、寝起きに梅干しをつまみながら飲むお茶。これはもう、やめられませんね。
栄養満点の緑茶を飲む習慣は昔の人の知恵
緑茶の加減かどうかはわかりませんが、おかげさまで身体はいたって健康です。
最近、仲間うちでは糖尿病の人が多いようなんですよ。お酒が好きだったり、肉ばっかり食べたりとそれぞれですが、そういう人は一般的にお茶をあまり飲まないように思いますね。甘みのあるものばっかり飲んじゃう。
お茶さえあれば十分なんでお酒は飲みませんが(笑)、これ程健康でいられるのも、お茶をたっぷり飲んでいるおかげじゃないでしょうか。
もともとお茶は、薬として珍重されていたものですし、「茶腹も一時」ってことわざがあるように、お腹がすいても茶を飲んでおけばしのげる。それだけ栄養もあるってことでしょう。昔の人の知恵ですね。
家の庭にある牡丹の木には、いつも出がらしの茶葉を肥料として撒いています。
これがまた、栄養たっぷりなんでしょう、毎年、見事な花を咲かせてくれます。
人間にいいものは、土にも花にもいいってことですかね。毎年、新茶の時期になると、お茶の産地を訪れて、生一本のお茶をいただいています。お茶の味は産地によって全く違うんですよ。
生一本のお茶を飲むと、その違いがよくわかります。日本人の生活に馴染み過ぎて、最近は影が薄いお茶ですが、その良さを改めて認められる時がきっとくると思います。