現代栄養学とエネルギー

私たちは、生きていく上で、たえず身体に栄養を供給しなければなりません。その栄養素は、大きく分けて5つあります。

  1. 糖質(炭水化物)
  2. たんばく質
  3. 脂質(脂肪)
  4. ビタミン類
  5. ミネラル類(無機質)

です。
これらのうち糖質、たんばく質、脂質の3つはエネルギーの基となる栄養素で、ふつう三大栄養素と呼ばれています。

また、この3つは、エネルギー源ともなりますので熱量素とも呼ばれています。ビタミン類、ミネラル(無機質)類はエネルギーとはなりませんが、からだの中のいろいろな器官をスムーズに機能させ働かせたり、からだの調子を整えたりしますので保全素と呼ばれています。
三大栄養素は、毎日糖質50%、たんばく質25%、脂質25%です。

毎食ごとにこの割合のバランスがとれていれば文句のつけようがないのですが、実際には、栄養士に栄養の管理でもしてもらわないかぎり、うまくいくものではありません。

エネルギーを計算しながら食べていなくても、たいていの目安をつけて朝・昼に欠けた栄養素は夜に、夜・朝に欠けたものは昼にという具合に調整していれば、それほど問題はないのですがそこまで細かく気をつけて食事を取っている人は少ないのです。

極度の偏食をして、大幅に三大栄養素のバランスをくずしたりしないかぎり、からだは自然に栄養を要求していますから、栄養失調になることはありませんが栄養過多にはなります。

それに年齢や男女の別、やっている仕事、常日頃の健康状態によって多少の変更は必要なのですが、そういったことは無視しがちです。

わたしたちが毎日毎日活動していられるのは、食事から取った栄養素が体内で酵素とともに化合しエネルギーを生じるからです。私たちが1日に必要とするエネルギーは、年齢、性別、仕事の内容によって異なりますが、平均的な日本の男性の場合、あまりからだを使わない人で2000~2200カロリー、過激な労働をする人で3000~3500カロリーとされています。

女性の場合は、男性の数値から300~500カロリー減らして考えてみればよいとされています。また、その人に合った適正なエネルギーは標準体重(身長から110をマイナスしたもの)からだいたいの目処がつきます。それは体重1キロに35カロリーをかけたものがその人の1日に必要なエネルギーです。

大豆が世界的にも注目されている

日本では伝統的な食材の「大豆」

大豆は、太古の時代から慣れ親しまれていたもので、日本人の食生活には欠かせません。「古事記」には「五穀」という言葉がでてきます。あの五穀豊穣の五穀です。
それはアワ、キビ、ムギ、マメ、イネのことを指しているのですが、その中のマメとは大豆のことです。静岡県にある登呂遺跡から大豆の化石が出てきたことからみても、すでに弥生時代に大豆は栽培されていたと推測できます。

大豆の歴史は日本人の食生活の歴史といっていいくらい大豆を日本の風土にあわせて古来から日本人は多種多様、多彩に利用してきたのです。大豆は繊維が多く、繊維の多いものは美食の対象からははずされています。
繊維の質を除いた口当たりのよい食品のみ好まれる時代にあっては大豆は忘れられていた存在でしかなかったのです。

アメリカ人にも注目のまと

とくにアメリカでは、以前は「大豆はまずいもの」「せいぜい家畜のエサにしかならないもの」とみていてかえりみることすらありませんでした。ところが、今では、様相がすっかり変わり、アメリカでも大モテなのです。

アメリカは肉食中心主義できましたので、心臓障害を起こす人が多く、心臓病王国とさえいわれています。コレステロールがたまって動脈硬化を起こし、心筋梗塞になる人が後を絶ちません。また、肥満もかっては重役タイプなどといわれていたようにアメリカでも富の象徴だったのですが、今ではすっかり意味を失い、減量するひまもない低所得者の方がかえって肥満者が多いという状態にあります。

こうしたアメリカ人の忌みきらう肥満や心臓病に日本の低カロリー食である大豆食がいいと分かり、とうふやみそが好まれるようになっているのです。豆腐や味噌関連の本がベストセラーになったことさえあります。

アメリカでは大豆食はブームから定着の時期にきているのかも知れません。

千差万別の大豆食

大豆はマメ科の一年草で平凡な植物ですが、その豆は実に多種多様な利用のされ方をしています。大豆はアミノ酸組成が動物性たんばく質とよく似ており、それゆえ「畑の肉」と称されるだけのことは十分あるのです。

必須アミノ酸のすべてを含み、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンE などにもかなり含有されています。大豆にはトリプシンインビターがあって、生のままでは食べられません。
しかし加熱するとその有害物質もすぐに消え、ゆでて食べる枝豆などにはかえって生大豆のときにはなかったビタミンCが生ずるくらいです。

このビタミンCは大豆もやしにもあります。また日本人は、大豆から納豆やみそという発酵食品を作ります。高温多湿の日本の気候風土を利用し、菌を入れて大豆のたんばく質や炭水化物を酵素によって、分解させるのです。
大豆を水につけて加熱ししぼると豆乳とおからに分離され、それぞれ固有の栄養を持ちます。しぼり汁である豆乳に凝固剤を与えると豆腐になります。そのとうふを凍らせたうえで乾燥させると凍りどうふとなります。

とうふを油で揚げると生揚げや油揚げになります。とうふをしぼって水分を少なくし野菜やヒジキを入れて油で揚げるとがんもどきになります。

また、湯葉は豆乳を加熱した時に生じる薄い上膜をとり出して作ったものです。ざっと数えあげただけでも大豆を利用して11種類の食品を作りあげることができます。
そしてそれらは、それぞれ独特の味わいを持っており、毎日食べていてもすこしも「あき」のこない摩討不思議な食べものです。あまりにも身近にあるために、それほどのありがた味は感じていませんが栄養価のわりに商品の値段も安く、これほど苦から日本人に恩恵を与えてくれた食品はほかには考えられません。

生活習慣病予防に必須の大豆

ところでなぜ、一時は忘れられていた大豆が再認識されてきたのでしょう。それは、一部には情報がアメリカから逆輸入されてきたという面もありますが、一番の原因は、あらゆる生活習慣病に大豆は有効だということが内外の学者の研究によっても十分に確かめられているからです。

しかし、大豆は生活習慣病によいだけではありません。ホルモン異常、貧血、皮膚の保持、歯の健康等にも効果があり、美容に熱心な女性にも十分摂ってもらいたい食品なのです。納豆美人、とうふ美人といった言葉もあながちウソとは言えない面があり、いくらでも立証できるのです。

生活習慣病の原因になる欧米型の食習慣は日本人には合わない

世界で和食に注目が集まる

日本の古来からの伝統食品である大豆食品が、再認識され、世界中から注目されています。高栄養、高カロリーの食事を取り続けてきた先進諸国の人々が、日本の低栄養、低カロリーの食事に深い関心を寄せているのです。

栄養量嘗な欧米型の肉食中心の食事があらゆる生活習慣病の原因になっていると気づいたのです。欧米に追いつけ追いこせと、一生懸命欧米型の食事をまねしてきた日本人は、今や欧米人と同じような生活習慣病に悩んでいます。

皮肉なことに、欧米人の方が日本的低カロリー食を絶賛し、人間のからだにとって理想の食事だと言い出す始末です。フランスの最高級のレストランでパリにある「ラルケストラート」の経営者サンドランスさんは、先頃来日した際に、「日本の伝統の料理は世界のあらゆる料理の200年先を行っています」と最大級の言葉で評価していました。

「いつまでも若々しくありたい」、「美しさを一年でも長く保っていたい」、「長寿をまっとうしたい」。こういう願いは、人間であれば誰しもが持っていることで、よほど破滅型の人生を送っている人でないかぎり、ごく常識的、一般的な考えといって差し支えないでしょう。

とくに中高年になると、ある程度の先もみえてきて、体のことを真剣に考えるようになります、また、からだそのものにも、いろいろな障害がでてきて、からだからもいつも警告を発せられるようになります。
そうするうちに、いやでも健康に気遣うようになってくるものです。そこで、いいといわれているさまざまなクスリを飲んでみたり、いろいろな健康法を試してみたり、スポーツに励んでみたりするわけですが、これといった決定的なものがあるわけではありませんので、また、もとの生活に戻ってしまったりします。

大事なのはやっぱり口にするもの

健康法や薬剤も、そのケースによっては決して否定するものではありませんが、私たちはまず、毎日摂取している食物の栄養のことを第一に考えなくてはいけません。カロリーを計算したり、栄養を分析しながら毎日の食事をするなんてことは、たいていの人はしていませんが、そこまで考え込まなくても、身近なところにはけっこう栄養豊富な食物があるものです。

日本人は「栄養をつけようい「スタミナをつけよう」などということを思いつくとすぐ、肉やタマゴを口にします。たしかに肉やタマゴは大変な栄養源です。

しかし、日本人の食生活の中で欧米型の肉食中心の食事が増えてくるとともに、むかしの日本人ならそれほどかからなかった病気に今の日本人はかかるようになってきたのです。

動物性たんばく質中心の欧米型の食生活を取り入れることによって、欧米人に多かった病気もついでに輸入させてしまっているのです。とくにそれは生活習慣病の関係に多く、肥満、脳卒中、動脈硬化、心筋梗塞、糖尿病、痛風などという病気は、戦後、急速に増えてきたものなのです。

大豆=医食同源の原点

「医食同源」という言葉があります。中国で言われていることのようですが、日本人はこの医食同源という言葉を知っていながら、今までほとんどかえりみず、即効性のあるクスリにばかり頼り、自分のからだを自分の力で維持するという点に欠けていたようです。

「医食同源」ということは、ここにきて幾分認識され、少しは、毎日摂取している食べものについて考えている向きもあると思われるのですが、まだ、食物から栄養をとり、その栄養からいろいろな病気を予防したり、治療したりしているという事実について、深く知ろうとしてはいません。

欧米型の食事に慣れた今の日本人は私たちの先祖伝来の食物であり、食品学・栄養学の面からも、すばらしい食物、大豆食品のことを忘れすぎていたようです。

大豆食品こそは、日本人にとって「医食同源」の原点ともいうべき食物だったのです。大豆は、中国が原産地といわれています。わが国では、秋田、静岡、山口など各地の弥生後期の遺跡から、大豆が出土していることからみて、日本の歴史がはっきりしないその遠い以前から、食物として利用されてきたようです。