食品に含まれる物質によって発がんを抑制するのが「化学予防」

食事によるガン予防は、ガンができるメカニズムに沿って、大きく2つの過程が考えられます。1つはガン細胞が生まれるまでの過程、もう1つはそのガン細胞が活発に分裂増殖する過程です。

ガンは、もとはたった1個のガン細胞から分裂増殖してふえた、ガン細胞のかたまりです。ですから、もとのたった1個のガン細胞が体内にできるのを防げばガンは防げるのですが、そのたった1個のガン細胞は、正常細胞が変異をとげて生まれたものです。

この変異のことを「ガン化」と呼んでいるのです。発ガンのメカニズムについては、正常細胞がガン細胞に化ける過程は、イニシエーションとプロモーションの2段階からなると一応分けて考えることができます。

イニシエーションとは、正常細胞の分裂増殖を制御している遺伝子に傷がつくことをいいます。プロモーションはその細胞の異常が、細胞膜などの構造にまで広がり、ガン細胞としての体裁が整う段階です。イニシエーションを引き起こす物質はイテンエーター、プロモーションを引き起こす物質はプロモーターと呼ばれます。

たとえていえば、イニシエーターが乗りこんでエンジンをかけた車にプロモーターが乗り、アクセルを踏みこむと、ガン細胞という恐ろしい車が暴走し始めるのです。

イニシエーターの多くはプロモーターとしても作用しますので、それ自体に発ガン性があるため、発ガン物質と呼ばれます。これに対して、プロモーターはそれ自体には発ガン性がありませんが、体のどこかにイテンエーションを受けた状態の細胞があった場合、そこにプロモーターが作用すると、発ガンします。

食事でガンを防ぐということは、第一に、こうしたイニシエーターヤプロモーターの活性を弱めたり体外への排泄を促進したり、傷ついた細胞の修復を速めたりする物質を食品中に探して、摂取することを意味するのです。

このように、食品などに含まれる物質によって正常細胞の発ガンを坤きむことを「化学予防」とも呼んでいます。ところで、もし発ガンの化学予防に失敗して、体のどこかにガン細胞が1個か2個できてしまったとしても、まだガンという病気にはなりません。

病院などでガンと診断され、治療の対象となるのは、ガンが肉眼でわかる程度、つまりガン細胞の個数にして10億個前後にまで増殖してからなのです。

体のなかにできたガン細胞が10 個や20個にふえても、その段階でガンの芽を摘み、あるいは芽を伸ばし始めたガンの増殖を抑えることができれば、その人はガンで死亡することはありません。

私たちの体内でガン細胞をすばやく見つけて破壊したり、増殖を抑制する働きを担っているのが、マクロファージやリンパ球などによる免疫監視機構です。

食事でガンを防ぐということは、第一には細胞レベルでガン化を抑え、第二にはこうした免疫システムを刺激し、活性化することでガン細胞の増殖を抑制するような物質を、食品中に探して摂取することを意味するのです。

言いかえれば、「細胞レベルでの発ガンの化学予防」と「ガン細胞の増殖抑制」のどちらかの効果が認められた物質を含む食品が、ガン予防に役立つ食品というわけです。食用きのこに含まれる多糖体や糖タンパクがまさに後者の免疫システムの賦括によってガン細胞の増殖を抑制すること、の抗ガン作用を発揮することを示したものでした。

そのなかで、経口でも効くエノキタケの糖タンパク(EA6)などが発見されたのですが、ガンの治療薬の開発に研究の力点があったため、食用きのこによる発ガンの予防についてはくわしく研究していませんでした。

米国立がん研究所の報告によると、動物実験のレベルで発ガン抑制効果が確認された化学物質はすでに1000種類を超えたそうです。そこで、私たちも少し視点を変え、次の大きな研究課題として、エノキタケなどの食用きのこが、イニシエーターやプロモーターの「毒を中和する薬」となりうるかどうかの研究に取り組んできたのです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です