「38億年の進化の結果できた人体」は間違えない

この50年で起きた大変化が身体に与えるダメージ

全知全能とはいわないまでも、人間の身体というのはあらゆる生命体と同様に完壁なものだと私は思っています。そして、その誕生から現在までの歴史を振り返ると、原始のころより、人類は進化の過程で、現代の病気との聞いに備えてきたのではないかと思えるような歩みをしてきました。

そもそも、地球が誕生したのが鵜億年前といわれており、その地球上に初めて生物(バクテリア)が出現したのがその10億年後のこと。人類への進化の歴史はこのときにスタートを切ったのです。ふ最初の生物は海の中に息づきました。熱水鉱床から噴き出る硫化水素をエネルギーとするバクテリアは、やがて光合成をするバクテリアとして生まれかわり、地球上に簡素が生み出されました。

ここから生物は、単細胞から多細胞へと少しずつ変化してきたのです。多細胞の生物の始まりは、皮膚と腸管だけの生き物でした。皮膚は常に海水にさらされていたため、腸には口から海水をただようさまざまな有毒物質も入り込みます。

この段階でその生物には、有毒物質から我が身を守るマクロファージ(大食い細胞)が備わったようです。これは「原始マクロファージ」と呼ばれ、食べ物の中に混入してくる異物を会食して消化する働きをしていたと考えられます。

この原始マクロファージや腸などが少しずつさまざまな臓器へと変貌していき、肝臓、すい臓、胸腺、肺などが形づくられていきました。

くらげなどの二胚葉生物から寄生虫やミミズなどの三胚葉生物に進化した時点で、原始顆粒球と原始リンパ球が生まれたのではないかと思われます。

そして今からおよそ5億年前、ようやく脊椎動物が出現します。皮膚、えら、腸、肝臓を持った魚の先祖で、N K細胞、T細胞などのリンパ球があらたに備わりました。さらに生物が上陸した時点で臓器の分化が進み、えらは胸腺に変わり、腸こつずいは食べた物の消化吸収専門の臓器となり、造血機能は骨髄が受け持つこととなったのです。このようにして、さまざまな場所で作られたリンパ球が一定の場所でしか作られなくなり、やがて骨髄と胸腺とでリンパ球が作られるしくみへと変化してきたのです。

こうした長い長い年月を経て培われてきた私たち人間の身体は本来、完全無欠の防御力を誇るはずです。人体の機能の進化にともなって、人間は自らを傷つける多くの環境を、自らの力で克服してきたのです。

そして、38億年の歴史の中で、ここわずか50~60年の間に、人類は自らを痛めゆがつける歪んだ環境をさらに集約して作ってしまっています。

身体を痛めつける生き方をやめよう

この50年というもの、日本は産業経済の大きな変革期にあり、社会の構造そのものの改革がすさまじいスピードで進んできました。

それにともない、終身雇用の崩壊やリストラ、成果主義の導入、そして技術革新などによって、働く人々の労働時間は長くなり、精神面では雇用の不安や将来の不安、人間関係の不和などが生まれ、職務性ストレスが増しています。人間の身体は、ある刺激(ストレッサー)を受けると、これに反応して刺激の影響を最小限に抑え、正常な状態を保とうとする機能をもつ、きわめて優れた構こうじょうせいいじきのう造をしています。この反応をホメオスターシス(恒常性維持機能) と呼びます。ところがストレスが長く続くと、ストレスに対する抵抗力が低くなり、制御がきかず、正常な状態に戻りにくくなり、さまざまな適応障害を起こしていくのです。

それこそ太古の昔は、人間にとっての脅威は、劣悪な気候環境や命をおびやかす危険な動物でした。ところが人体と社会が成熟しきった現代は、なんと人間の最大の敵は人間になつているのです。長い年月をかけて完成した人体が、わずか50年ばかりの間に急激な進歩を遂げた人間の文明によって苦しめられている。

こんな悲しいことはありません。とはいえ私は、人間の進歩を否定しようというものではありません。私自身、その進歩によって恩恵を受けていることはたくさんあるわけですから。しかしここで考えなくてはならないのは、完全であるはずの人体をことごとく痛めつけるつ社会に、どっぷりと浸かりすぎるのは危険ではないかということです。

労働しかり、教育しかり、そしてクスリの使い方しかり。私たちはここでもう一度、正しい生き方とはどのようなものかを、考え直す時期に来ているのではないでしょうか。

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